左から、阿部サダヲ、谷原章介 撮影:引地信彦 左から、阿部サダヲ、谷原章介 撮影:引地信彦

大人計画のプロデュースユニット、日本総合悲劇協会(通称ニッソーヒ)が、『業音』以来5年ぶりに再々演となる『ドライブイン カリフォルニア』を新キャストで上演する。ニッソーヒは、松尾スズキが「大人計画ではできないシリアスな悲劇を」と、劇団員と松尾が自ら声をかけた俳優たちで上演、1996年に『ドライブイン カリフォルニア』で旗揚げした。関西には2004年、同作の再演で初登場。松尾のかなり刺激的な作品群とはテイストが異なり、切なくて愛おしく慈愛に満ちた悲喜劇だ。物語の舞台は、裏手に竹やぶの広がる田舎町のドライブイン、カリフォルニア。経営者のアキオ(阿部サダヲ)のもとに、14年ぶりに妹マリエ(麻生久美子)が中学生の息子ユキヲ(田村たがめ)を連れて帰郷、さまざまな人間模様の中で複雑に時が流れ出す。東京公演の上演中、阿部と大人計画に初参加する谷原章介のリモート会見が行われた。

「ドライブイン カリフォルニア」チケット情報

ニッソーヒには初出演となる阿部は「初演も再演も観ていますが、僕らより比較的大人な方々が出演されていて、よそゆきな感じがして自分はあまり関わらないだろうと思っていたので、アキオ役と聞いてビックリしました」とオファー時を語る。谷原は25歳ぐらいから大人計画の舞台を観劇、映像では多くのメンバーと共演経験があり、阿部とも20年以上前にドラマで共演、「念願の大人計画の舞台」と喜ぶ。が、この作品は観ていなかった。役は、14年前にマリエをスカウトし、東京でアイドルデビューさせた芸能マネージャーの若松。「登場人物の中でひとり異質な存在なので、最初迷った時期はありましたが、徐々に見えてきて。全員がどこか歪みや喪失感など欠けている部分を抱える人たちばかりで、みんなが誰か辛かった人のことを受け止めて逃がしてあげるような、希望のあるとても優しいお話。他の大人計画の作品と比べて、すごくソフトな柔らかい物語だと感じます」。

初演から28年経つが「どの時代にもハマる作品で、古さがまったくない」と阿部。「松尾さんって、すごい」とふたりで声をそろえる。「笑いの数も多くて、すごくお客さんに伝わっている感じ」という東京公演から間もなく大阪へ。「サンケイホールブリーゼは初めてなので楽しみです。大阪の方に、また新しい『ドライブイン カリフォルニア』を届けられるように頑張ります」(阿部)。「砂糖菓子のように笑いがわぁ~っとまぶされていますけれど、芯の部分にある優しくて切ない物語をお届けしますので、どうか楽しみにしていてください」(谷原)。

公演は6月26日(日)まで東京・本多劇場にて上演中。6月29日(水)から7月10日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。チケット発売中。

取材・文:高橋晴代