舞台『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』(通称:『ままない』)が2022年7月1日(金)から博品館劇場で開幕する。

本作は、葵遼太による同名小説が原作。彼女を失い、悲しみを抱えたまま高校3年生をやり直す佐藤晃が主人公。留年して、居場所がないと思っていたはずの学校生活だが、クラスメイトの白波瀬巳緒や御堂楓、和久井順平と出会い、気がつけば自分の周りに輪ができていき......。

今回、主人公の佐藤晃役を演じる松本岳、同級生の和久井順平役を演じる輝山立、柿ケ原武彦役を演じる吉田知央に話を聞いた。

原作を読んだ感想を尋ねると、「確かにフィクションなんですけど、誰にでも起こりうる日常の中で話が展開されていきます。本当に身近にいるような人たちが絡み合うからこそ、きっと誰の心にも刺さる、万人に楽しんでいただける作品になると思います」と輝山は言う。

松本は「僕が演じる晃は、いろいろと葛藤しながらも生きている役ですが、周囲の人に助けられながら成長していく。タイトルからはなかなか内容は想像し得ないですが、読み終わったあとはいい気分になって、余韻が残りましたね」。吉田は「まだいろいろと不安定な時期の高校生たちの人間模様が描かれているので、なんか懐かしい気持ちになりました。この世界観の中に飛び込んでいけると思ったら、すごくワクワクします」と話す。

登場人物たちはそれぞれ個性的なキャラクター。自身の役について、松本は「晃のように、本当に大切な人を失った経験がないので、その点は精一杯想像することしかできないです。でも、人のことをよく見ていたり、一人でいるときに考え込んでしまいそうなところだったりは似ている気がする」という。輝山は「素敵な個性の持ち主だなと思います。和久井はずっと1人で人生を進めているタイプで、誰かに頼って生きてきた自分とはギャップがあるかな」と分析。吉田は「学生だった頃を思い返すと、自分はどちらかというと晃のように陰があったと思いますが、武彦みたいな奴はクラスにいた。たくさん見本を見てきた気がします」と笑う。

本作を映像ではなく、舞台化する醍醐味については「映画だとこういう雰囲気の作品も結構ありますけど、舞台だとなかなかない気がします。舞台で見るからこそ感じる色を感じていただけたら」と吉田。輝山も「周囲の人に影響を受けながら、主軸の晃の心情変化を生で見られるのはとても贅沢だと思います。それから今回はバンドの生演奏があるので、その音楽の力も舞台ならでは」と話す。

最後に観客へ向けてのメッセージとして、松本は「皆さんの心に残る舞台になればいいなと思っています。原作を読まずに観に来ても面白いでしょうし、読んでから来てもらったらこれがどう舞台になるのかという楽しみが増えるはず。とりあえず、ぜひ観に来てほしいです!」と語った。

公演は7月10日(日)まで。

取材・文:五月女菜穂