撮影:奥田祥智

登場の瞬間に舞台の空気を変えるほどの鮮烈な存在感、磨き抜かれた肉体から放たれる圧巻のムーヴメント――。これまで、各国のバレエ団でプリンシパルとして活躍し、世界中の観客を魅了してきた中村祥子。そんな彼女の、新たなる挑戦ともいえる舞台が「BALLET TheNewClassic」だ。フォトグラファーの井上ユミコが企画し、Kバレエ カンパニープリンシパルの堀内將平が舞踊監修を務める本公演のオファーを受けた際、「堀内君“らしい”」コンセプトに共感し、出演を快諾したという。
「彼の“お客様に楽しんでいただきたい”という真っ直ぐな想いと、その発想力・実行力に触発されました。今回は、ヘア&メイク、衣裳、演出に至るまでを、トップクリエイターの皆さんに手掛けていただきますが、このような機会はなかなかありませんし、彼らとコラボレーションすることで、自分の表現方法も変化してくると思います。また新たな一面をお見せできればと、今からわくわくしています」
自身は、東京での一般公開された舞台で初めて『瀕死の白鳥』を披露する。
「ある程度の年齢やキャリアを重ねて、今まさに『瀕死』を踊る時期が来たのだと実感しています。あれほどシンプルな動きの中でドラマ性を見せなければならない上に、舞台で自然に放出されるアドレナリンの完全抑制も必要とされる本当に難しい作品ですが、単なるポジションやポーズの美しさを越えた深い表現の境地に到達できるよう、自分の中の課題と日々向き合っているところです」
また、出演者全員、総勢11名による『ライモンダ』でも主軸を担うが、
「これだけのメンバーが揃うと、とてもいい刺激を受けますね。リハーサルでのコミュニケーションの中でいろんな情報交換をしたり、自分に足りない部分も気づかせてもらえたり……。『ライモンダ』は、それぞれの個性が存分に発揮される構成になっていますので、素晴らしいダンサーたちとこうして共演できることを嬉しく思います」
2020年にはKバレエ カンパニーの名誉プリンシパルとなり、現在はフリーランスとして、さまざまな振付家の作品に挑んでいる。
「一度カンパニーという環境を離れてみると、大変なこともたくさんありますが、それもまた自分に必要な経験だと覚悟を持って乗り越えるようにしています。ダンサーはやはり踊り続けていないといけない。だからこそこの先も、心惹かれる作品に魂を捧げ、私なりのバレエ人生を最後まで突き進んでいきたいです」

撮影協力:スタジオアーキタンツ
取材:吉野美山