いま、多くの才能あるバレエ・ダンサーたちが海外で活躍する中で、ひときわ注目される兄弟がいる。英国ロイヤル・バレエ団でファースト・ソリストとして活躍するアクリ瑠嘉と、その弟で米国のヒューストン・バレエのデミ・ソリスト、アクリ士門。彼らが初めて、二人揃ってのインタビューに応えた。

コロナ禍で約2年間、直接会うことのなかった二人だが、「兄はいまでも僕の憧れ」と弟の士門。兄の瑠嘉は「テレビで見た熊川哲也さんに憧れて、家のリビングで二人で踊っていましたね」と懐かしそうに目を細める。
両親が営むバレエ教室で幼い頃からバレエに親しんだ兄弟。瑠嘉がローザンヌ国際バレエコンクールでチャンスを掴み、熊川が学んだ英国ロイヤル・バレエ学校に留学すると、3学年下の士門は「言葉は必要なかった。帰国のたびに成長している兄を見て、僕も同じ道を目指すように」と振り返る。
瑠嘉がロイヤル・バレエ団に入団した数カ月後、兄の背中を追うように、士門はロイヤル・バレエ学校へ。「ロンドンに兄がいたのは本当に心強かった。バレエ団に兄がいると皆に自慢できましたし(笑)! 最終学年では何度かバレエ団の公演に出演させてもらう貴重な経験も」(士門)。「そう、『ロミオとジュリエット』では同じ舞台に立ちました。僕がキャピュレット家、弟がモンタギュー側の役。嬉しかったですね。舞台上の二人が一緒に写ったレアな写真もあるんです」(瑠嘉)。
卒業後、士門は兄とは別の道を選び、米国のタルサ・バレエに入団。「僕はこのバレエ団で地道に上を目指していく方が合っている、タルサバレエ団では一年目から沢山良い役をもらえました。大きなカンパニーではなかなかできないことです。」(士門)。4年後の2020年にはより規模の大きいヒューストン・バレエに移籍し、次々と新たな役柄に挑戦している。「いい役を踊ったり昇進したり、彼はいま、本当に頑張っていて、僕も嬉しく思います。いつか日本の舞台で二人で踊りたい!」という瑠嘉。これからも常に弟の目標でありたいとも明かした。
ヒューストン・バレエはこの秋、『白鳥の湖』を携え、初の日本公演を行う。士門は「このウェルチ版は男性の活躍の場が多いヴァージョン。僕もソリストの役を練習しています!」と目を輝かせた。

ヒューストン・バレエ『白鳥の湖』は10月29日(土)、30日(日)、東京文化会館にて。チケットは発売中。

取材:加藤智子