8月にトライアウト公演が行われる『シュレック・ザ・ミュージカル』。全役オーディションで1300人を超える応募者から見事タイトルロールを射止めたspiが、7月中旬に行われた取材会で胸中を語った。
ドリームワークス製作によるアドベンチャーコメディ映画『シュレック』シリーズの第1作(2001年)を、デヴィッド・リンゼイ=アベアーの脚本・作詞、ジニーン・テソーリの作曲でミュージカル化した本作。米ブロードウェイ初演版(2008年)を凝縮した90分のトライアウト公演として日本へ初上陸するにあたって、翻訳・訳詞・音楽監督を小島良太、演出を岸本功喜が手がける。
「自分の考える“シュレックらしさ”はいったん脇に置いて、この音楽を楽しんじゃえ!と突き抜けた瞬間がありました」とオーディションのハイライトともいえる二次審査を振り返ったspi。「審査員も自分も恥ずかしくなるくらい弾ける笑顔で歌って踊って、時にはフェイクまでかましちゃって。自分の殻を破れたことを評価していただいたのかもしれません」とシュレックを掴み取るまでの手応えを語る。
シュレックはどんなキャラクターか、改めてspiに尋ねてみた。すると「世間から汚いと忌み嫌われているものを愛する審美眼の持ち主で、周りとズレているコンプレックスから社会に馴染めない」「だからあえて孤独を選び一人で暮らしている」とコメント。同時に「個人的に好きで毎日買っていた自動販売機のドリンクが、売れ筋じゃないからといって突然別の商品に入れ替わってしまった。これも世の中とのズレ。僕をはじめ30~40代男性がよく苛まれる小さな絶望の究極体みたいな存在が、シュレック」と自身の境遇に置き換えて例え、報道陣を笑わせることも忘れない。
劇中ではそのシュレックが、囚われの身である姫・フィオナ(福田えり)を救い出す冒険に出る。道中で出会う喋りが達者なロバ・ドンキー(吉田純也)の「一人で大丈夫なやつなんていない」という意見に同意しつつも強がってしまうシュレックに、spiは「共感する」という。「一般的な価値観とのズレにコンプレックスを感じつつも、どこかでみんなと繋がっていたい気持ちがあるんです。なので僕の中にある感情のボリュームを上げるイメージでシュレックと向き合えたら」と率直に胸の内を明かし、インタビューを結んだ。
公演は8月15日(月)~28日(日)に、東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代