舞台『裸足で散歩』が2022年9月17日(土)から東京・自由劇場で開幕する。
舞台は、2月のニューヨーク。真面目な新米弁護士のポールと、明るく自由奔放な若妻のコリーは新婚旅行を満喫し、新居のアパートへと帰る。しかしそのアパートに住む住人は少し風変わり。なかなか馴染めないポールとコリーの間で心のすれ違いが生じてーー。本作は、喜劇作家ニール・サイモンによるラブコメディで、1963年にブロードウェイで初演。67年には映画も公開されている。
今回、ポールを演じるのは加藤和樹。コメディ作品に挑戦する意気込みを聞くと「稽古に入る前までは“コメディ作品”という印象を強く持っていたのですが、実際に自分が立ってお芝居をしてみると、その意識が薄れていきますね。もちろん笑いどころはあるのですが、笑いを取りにいこうとは思っていなくて。ポールとしてどういられるか。コリーをはじめ、人物に対してどう接していくか。心情を作っていけばいくほど、彼の真面目さがすごく際立って、結果面白くなるんだと思います」と真面目に答えた。
コリーの母であるバンクス夫人を演じるのは、戸田恵子。実は戸田は約40年前にコリー役を演じた経験があるのだが「大変だったという印象はあるものの、残念ながら初演の経験が活きていることも、邪魔になっていることもないですね。全く真っ新な状態で臨んでいます」と笑う。今回のバンクス夫人役については「私自身、保守的な性格の役をキャスティングされることは稀。ありがたいなと思っています。どうしたら楽しい母になれるか、試行錯誤しています」。
加藤と戸田は、今回が初共演となる。コロナ禍でなかなか雑談をする機会が少ない稽古場ではあるが、それぞれの印象や稽古場での様子を尋ねると、加藤は「昔からテレビで見ていたので、ミーハーながら『本物だ』と思いました。声が大好きなので、戸田さんの声を聞いているだけでも幸せ」と話す。一方の戸田は「堅実で真面目で、ポールにぴったり。稽古場では、これから一本ミュージカルが始まるのかなというぐらいのウォーミングアップと発声をしていたり、自分の机を拭いてから帰ったり。私の周りにはなかなかタイプの男性」とよく観察していた。
観客へのメッセージとして、加藤は「コリーとポールが訪れた試練にどう立ち向かっていくか、お互いがどう寄り添うか。その一歩を踏み出せば全然なんてことない喧嘩ですが、でもその一歩が難しい。大切な人に一歩歩み寄ることの大切さに気づかされる作品。何も考えずに見ていただきたいと思います」。戸田は「まだ稽古途中ではありますが、それぞれがベストなキャラクターでいけるのではと思っています。誰かが死んだりするドラマチックな話ではなくて、日常生活の中で、みんながちょっとだけ階段を上るお話。おしゃれなニューヨーク感を味わいつつ、元気になって帰っていただければと思います」。
東京公演は9月29日(木)まで。その後、兵庫、大阪、神奈川、東京多摩公演が予定されている。
取材・文:五月女菜穂