
劇団時間制作の主宰で気鋭の劇作家・谷碧仁と、劇団温泉ドラゴンの実力派演出家・シライケイタが初のタッグ。新作『ホームレッスン』で、“100の家訓”を持つ奇妙な家族の姿を描く。そこで稽古中の田中俊介と堀夏喜(FANTASTICS from EXILE TRIBE)に話を訊いた。
思いがけず子供を授かり、彼女である三上花蓮の家へと挨拶に訪れた伊藤大夢。そこで彼は、三上家の“100の家訓”の洗礼を受けることになり…。演じる大夢について田中は、「過去の辛い経験から、家族ってものに対して強い憧れがあるんですよね。それが三上家に来てみたら、『あれ、なんかおかしいぞ?』と(笑)。ただ彼にとっては家族像ってものすらふわっとしていて、それでも家族って笑っていられる、幸せを感じられる空間だと思っていた。それなのに…という状況なんだと思います」と捉える。
堀が演じるのは、花蓮の弟・朔太郎。彼は三上家の家訓に反した罰で、部屋に閉じ込められている。「朔太郎は18歳の少年ですが、若い年代だからこその意志の強さやそれを曲げない気持ち、反発心といったものがすごく滲み出ていると感じます。この家族しか知らずに育ってきた中で、きっと周りを知るきっかけがなにかあったんでしょうね。その衝撃は相当大きかったと思いますし、一度でもそういった思いが芽生えてしまった以上、自分の家族への違和感は拭えないものになっていったと思います」
三上家にとっては外部の人間である大夢と、この家族と18年間暮らしてきた朔太郎。それぞれ“100の家訓”に翻弄されていくふたりだが、この人物を演じる上で核にしたいことを訊くと、「大夢って、いろんな面を出していかなくちゃいけないキャラクター。ただその中でも僕が意識しているのは、純粋に花蓮のことが大好きで、家族ってものを愛したくて、その家族を守りたくてやっているということ。そこだけはブレないように演じたいです」と田中。一方の堀は、「やっぱり意志の強さです。そこは自分から生み出すというよりも、台本にすでに描かれている感情なので、しっかり自分の中に朔太郎を落とし込んで演じられたらと思います」と意気込んだ。
さらに「家族って本当にさまざまなかたちがある分、お客様によって感じ方もそれぞれ変わる作品だと思います」と堀。田中は「今の世の中にリンクする部分が非常に多い作品」と驚きの表情を浮かべ、さらに「今こそ観てもらいたい作品ですし、100の家訓を持った、この一風変わった家族の行く末を見守ってもらえたらと思います」と続けた。
取材・文:野上瑠美子