
舞台作品の劇作家・演出家として、さらに映像作品の脚本家・監督として幅広く活躍中の加藤拓也。彼が主宰する劇団た組の最新作『ドードーが落下する』が9/21(水)にKAAT神奈川芸術劇場にて幕を開ける(他、松本、札幌でも公演あり)。主演は藤原季節。平原テツら、た組や加藤作品にお馴染みの面々ばかりで「気心の知れたメンツなので賑やかな稽古になりそう」と、藤原も平原も口を揃える。
「公私ともに仲のいいメンバーで、本当なら仕事とプライベートは分けるものだと思いますが、今回の作品に関しては加藤さんがあえて公私を混ぜちゃったというか、公に私を持ち込もうとしているのかも。微妙にタブーとされていたような、プライベートの空気感を作品に取り入れるようなことをやろうとしているような気もします」(藤原)
「これは加藤くんにも言ったんだけど、ある意味今回のカンパニーは“バカ”の集まりみたいになりそうだけど、大丈夫?って(笑)。普通に大はしゃぎしちゃうタイプが揃ってるので。でも劇中にそういうシーンも確かにあるから、作品に普段の空気感が活きてくるのかもしれないね」(平原)
藤原が演じるのはイベント制作会社勤務の信也。平原が演じる売れない芸人の夏目とは仕事絡みだけではない、人間関係を築いているように見える。そんな二人と、周囲の人々との三年間を描いていく群像劇となる。
「なにしろ今回はテツさん絶対ヤバイですよ!ずっと舞台上にいるようなものだし」(藤原)「なんだかイジメみたいに加藤くんは毎回、限界を越えましょう!って言ってくるから。もうそんな年齢じゃないのに。今回も、今までやったことのない役なのでどうなるんだろう?と思ってる」(平原)
「だけど前回の舞台でもテツさん、5歳児の役をサラッとやられていたじゃないですか」(藤原)「そうだった、あれもやったことない役だったわ(笑)」(平原)
「加藤さんはよく“自意識の薄い俳優が好き”と言っていますけど、まさにテツさんは何を言われても“オッケー!”の一言で演じ切っちゃう。こうしたい、とかいう自意識が…」(藤原)「ゼロなんですよ」(平原)
「それで加藤さんの描いた物語をストレートに体現されているので、そばで見ていて本当に勉強になります」(藤原)
「僕、作品の分析もしないし、特に作者の意図も汲まないし。ただオファーされたことを楽しくやらせてもらうだけ。逆に、申し訳ないくらいです(笑)」(平原)
「とにかく今回もわかりやすい物語ではないし、わあ、面白い!と手放しで安易に言える作品ではないかもしれないですが、きっと心のどこかにガツンガツンと釘を打たれるような、ちょっと痛みを伴うような。ありきたりではない、忘れられない作品にはなると思います」(藤原)「加藤くんによると今回は“青春失踪劇”とのことで。でも決して10代の若者の物語ではなく、夢を追いかけているおじさんたちが現実と戦っているようなダサさのある生々しい話になると思います。そんな青春失踪劇を楽しみに、ぜひ劇場まで足を運んでほしいですね」(平原)
取材・文 田中里津子