出版不況といわれる昨今でも、相変わらず売れているジャンルといえば、ビジネス書。
書店に足を運ぶ度に続々と新刊が登場し、書棚の中身や平積みコーナーに置かれる本は、めまぐるしく変化しています。これも読まなきゃ、あれも読まなきゃとプレッシャーを感じる人もいるのでは。
ビジネス書を読んでもデキる人になれないワケ
そんな人にまず読んでほしいのが、ビジネス書を2000年代から振り返り、振り回される人の姿、カラクリ、適切な付き合い方など、ビジネス書を巡る過去~現状について書かれた、『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』です。
ビジネス書の「読み手」「書き手」「売り手」の三者の視点から描かれた、ビジネス書研究本であり、安易にビジネス書を読む人へ警鐘を鳴らす良質な1冊でもあります。
デキる人になるためにビジネス書を読むんだよ……と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、著者の漆原直行氏は前提として、専門領域に必要な「ビジネス実務書や専門書」と自己啓発や成功哲学を語る「ビジネスパーソンのための生き方解説本」は、「ビジネス書」という大きなカテゴリ内に含まれる本であっても、まったくの別物と考えるべきだと主張します。
特に自己啓発本や成功哲学本の類には、お約束のストーリーが用意されています。冊数を多く読んでいる人は特に「これ、どこかで読んだ展開では?」と気づくはず。『人を動かす』『7つの習慣』などの定番自己啓発タイトルにおける、おなじみの展開を利用し、それっぽく書かれていることが多いのです。
多くは「仕事術+ロジカルシンキング+自己啓発」といった、どのテーマも中途半端な内容でまとめられた「定番自己啓発タイトルの劣化再生版」。自己啓発について知識をつけたいときには、定番自己啓発本を読んでおくだけで十分です。定番モノを頭に入れておくことで、劣化本に惑わされず、読むべきビジネス書を吟味する審美眼を養うことにもつながります。
自己啓発本や成功哲学本は、「信者ビジネス」や「コンプレックスビジネス」と似た側面を持っています。「これを読めば今の自分はもっと改善される」と信じて、日常抱える不安感から、つい何冊も手に取ってしまうという流れができています。不安を煽り、仕掛けに上手く踊らされるのはもうやめましょう。
では、どのようなビジネス書を読めばよいのでしょうか。「入門書や実務書など、自分が仕事で携わる領域に関する、勉強のための本は読んでおいた方がよいでしょう。その分野のバイブルのような本、定番として長く読み継がれてきた本、仕事のできる先輩が薦めてくれた本を、1冊1冊丁寧に読んでいくのが、読書から得る効果を最大限に高めると思います」(漆原氏)