全国3都市ツアーを行う、ダンスエンターテインメント集団・梅棒の『シン・クロス ジンジャー ハリケーン』。キャストの遠山晶司と鶴野輝一(いずれも梅棒)が、稽古初期の段階でインタビューに応じた。
伊藤今人の作・総合演出、梅棒メンバーのみで上演された『クロス ジンジャー ハリケーン』(2015年)をバージョンアップさせる本作。小さな島を舞台に巻き起こる、愛と友情と男の意地を賭けた“ビッグスペクタクル”が展開される。キャストは他に梅澤裕介、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴、多和田任益という現在活動中の梅棒メンバーが名を連ね、東京公演には日替わりゲストとして高橋健介、小越勇輝、千葉涼平の参加も発表された。
初演当時、フランス留学帰りで主人公の野球少年に抜擢された遠山。開幕直前に重い捻挫をしてしまい、怪我をしている設定に変更を余儀なくしたことで「最後のブラッシュアップができずに本番を迎えてしまった」と過去の後悔を率直に語る。野球少年と同じ島で暮らす受験少年に扮した鶴野も「公演期間中に立て直した記憶がいまでも残っているほど、過去イチ必死だった」と遠山を励ますように同調し、再演に際して「7年前より成長した梅棒をお見せしたい」と意気込んだ。
バージョンアップのポイントを尋ねると、遠山は「新メンバーの存在が大きいですね」と2020年に梅棒の一員となった多和田の名前を挙げる。鶴野は初演時から活動休止・卒業している2名(大村紘望、飯野高拓)にも想いを巡らせ、「顔ぶれの変化によってグループとしての個性が転じた梅棒と時代に合う楽曲を選びました」とコメント。取材日に渡されたプロットによれば、初演からコミックソングが減って爽やかな現代のアーティストが増えているような……? そう印象を伝えると、二人とも「それがいまの梅棒かもしれませんよ」と笑顔を見せた。
クリエーションの手法も初演時から変化している。遠山いわく「昔は楽曲ありきで話をつくっていたけど、近年はストーリーが先行していますね」「浮き沈みのあるドラマをつくるにはこの音楽、と逆算で考えるようになりました」──。これを受けて鶴野も「総合演出の今人から頼まれて振付やシーンをつくっていた当時に比べて、最近は全体をパートで割り振ってみんなで議論しながらつくっています」と述べる。外部の作品に振付として参加するメンバーが多く、つくり手としての経験値やスキルが上がった賜物だろう。成長した梅棒をぜひその目に焼き付けてみては。
公演は11月18日(金)~27日(日)に、東京・サンシャイン劇場にて。その後、12月3日(土)・4日(日)に愛知・名古屋市芸術創造センター、12月8日(木)~10日(土)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールへ巡演する。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代