スタイリッシュ優等生!『坂本ですが?』

『となりの関くん』と良い対比なのが、ネット上で話題の漫画『坂本ですが?』だ。ひたすら情熱的に授業をサボる関くんと違い、こちらはクールに一分のスキもない完璧な学園生活を魅せてくれる。

黒髪にメガネ、細身でイケメンな坂本くん。あらゆる物事をそつなくこなし、表情ひとつ変えない彼は高校入学と同時にまわりの注目を集めた。それをおもしろく思わないのが学園の不良生徒たち。何かにつけて嫌がらせを仕掛ける。

落ちてくる黒板消しは鮮やかにキャッチ、机を捨てられても「僕はここで結構ですから」と窓辺に腰掛け女子の視線を独り占め、座る瞬間にイスを引かれても空気イスで軽やかに持ちこたえる……あらゆる嫌がらせに対して暴力を使うことなく、坂本くんはスタイリッシュに解決する。

坂本くんが最高最凶の職人芸を見せるのは、不良上級生からパシリを命じられたエピソードだ。自販機のジュースを巧みにブレンドしてオリジナルカクテルを作るなんて序の口。市販のパンをレストラン顔負けの高級料理にリメイクし、雑巾を縫い合わせて機能性あふれる体操着を作り、体育倉庫を改装して不良のための“おとまり部屋”まで仕立てあげてしまう。おもてなしも度を過ぎれば軽いホラー。休む間もない坂本くんの接待攻勢に不良は底知れぬ恐怖をおぼえはじめ、やがては音を上げてパシリ制度を中止してしまう。どこまでもクールかつ紳士的に、そしてスタイリッシュに読者の予想を越えていくストーリーから目が離せない。

作者初の単行本で、まだ1巻しか出ていないにも関わらず人気は上々。早くも書店関係者のツイッターでは「このままではすぐ売り切れてしまう」「もう完売しました」「勢いが止まりません」など、嬉しい悲鳴の数々がつぶやかれている。

まだメディアミックスは発表されていないが、作風としてはアニメより実写映画が似合うと思われる。出版社が『テルマエ・ロマエ』で知られるエンターブレインだけに、実写化を含めた今後の展開に期待したい。

 

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。