ミュージカル『バンズ・ヴィジット』が来年2月7日から日生劇場ほかで上演される。15日、都内で製作発表会見が行われ、「Haled's Song About Love」や「Omar Sharif」といった楽曲が披露されたほか、出演者らが意気込みを語った。
本作は映画『迷子の警察音楽隊』を原作に、ミュージカル『ペテン師と詐欺師』の作曲家デヴィッド・ヤズベクが作曲と作詞を手掛けた作品で、18年に米国トニー賞10部門を独占した話題作。日本初演となる今回、森新太郎が演出を務め、風間杜夫、濱田めぐみ、新納慎也らが出演する。
風間は、自身がミュージカルに初挑戦した『リトル・ナイト・ミュージック』(2018)での苦労から「2度とミュージカルはやらない」と心に決めたが、「歌わなくていい、踊らなくていい」というオファーで出演を決めたという。「(演じるトゥフィーク役は)確かに踊らなくていいんです。ただ、濱田さんとのデュエットみたいな曲があって。その1曲に魂を込めよう、力の限りを尽くそうと決意しました」。
本作の魅力について、演出の森は「この物語はびっくりするくらい、大したことが起きない」としつつ、「でも、第三者からしたら大したことではないけれど、登場人物の一人ひとりにとっては、もうこれ以上ないぐらい大したことが起きている」と話す。「それはほんの一瞬、心と心が通い合う瞬間があったということ。音楽の力を媒介にして、お互いがお互いの心の傷を分かち合えるような、素敵な瞬間が訪れるんです。それ自体もささやかな出来事だと思うんですけど、実はこのささやかな出来事こそが、我々が日常生活で一番待ち望んでいること、求めていることなのではないかという気がする」。
ディナ役の濱田は、森のコメントを受けて、「何でもないことが、実はすごく大切で、素敵なこと。それは他の人には何も気がつかないし、何事もなかったかのようだけれども、本人たちの経験や人生の中では大切な1ページで、人生の宝物なんですよね」とコメント。その上で「自然に、素朴に、素直に、情熱的に。ニュアンス的にはエモいと言うのでしょうか。そういう素敵な中東のオリエンタルの風が吹かせられれば。これからお稽古が楽しみです」と意気込んでいた。
カーレド役の新納は、2018年にブロードウェイで本作を観劇したことがあるというが「この作品の良さをなかなか言葉にするのは難しいんです。繊細で、何も起こらない。でもじわーっと心が温かく、すごく素敵な気持ちになる。......こんな平たい言葉でしか言えないんです。だからもう、つべこべ言わずに観に来て!と書いておいてください」などと語っていた。
東京公演は2月7日~2月23日、日生劇場。大阪公演は3月6日~8日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。愛知公演は3月11日、12日、刈谷市総合文化センター大ホール。
取材・文・:五月女菜穂