2007年にHey! Say! JUMPとしてCDデビューを果たし、18年からはアメリカの名門演劇学校で2年間学んだ岡本圭人。同校を卒業後に帰国し、舞台を中心に活躍を続けている。12月12日から上演される舞台「4000マイルズ~旅立ちの時~」では、大学生レオ役で主演する。岡本に本作への意気込みや役作りについて、さらにはアメリカ留学時代のエピソードなどを聞いた。
-本作は、13年にはピュリツァー賞の最終候補となり、世界各地で上演されている話題作の日本初演です。出演が決まったときの率直な気持ちを教えてください。
脚本を読んで、本当に素晴らしい作品だと感じています。(本作の演出担当の)上村(聡史)さんは尊敬する大好きな方ですし、キャストの皆さんも素晴らしい方ばかりなので、どのような舞台になるのか楽しみです。
-尊敬しているという上村さんは、岡本さんから見てどんな人ですか。
父親(岡本健一)の舞台の演出もされているので、昔から僕のことを知ってくださっています。父親の舞台の際にはごあいさつをさせていただいていますが、お仕事をするのは今回が初めてなので楽しみです。上村さんは、僕のことを“圭人”と呼び捨てで読んでくださるんですよ。それがすごくうれしい。キュンとしちゃいます(笑)。すでに関係性が出来上がっていますし、とても信頼しています。上村さんに導いてもらい、自分がどんな役者になるのか、どんなレオになるのか楽しみにしています。
-脚本を読んで感じている本作の魅力は?
レオとヴェラおばあちゃんの関係性がすごくすてきで、自分と自分のおばあちゃんの楽しかった思い出もよみがえってきて、温かい気持ちになれました。それはこの作品の魅力だと思います。それから、レオもおばあちゃんも心に傷を負っていますが、コミュニケーションを取ることでだんだんと心を開いていき、次に進む一歩を踏み出そうとするストーリーに勇気をもらえました。
-岡本さんが演じるレオという役はどんな青年だと感じましたか。
最初に読んだときには、レオは自分の心に正直な、人間らしい人間だと感じました。強さの中にも弱さやもろさがあり、自由奔放に見えて人に優しい。自分もこういう人間になれたらと思いながら読みました。それから、人とのつながりを大切にする人でもあると思うので、そこはすごくすてきだと思います。
-レオに共感するところはありましたか。
台本の中で、ニューヨークについて「ビルの監獄にいるような、鳥の籠に入っているみたいな」と表現するシーンがあるのですが、それは実際に僕がニューヨークに留学したからこそ理解できるところだなと思いました。レオの心情についても共感できるところは多いです。ただ、おばあちゃんはアメリカの共産党員というエリソードも出てきますし、レオ自身もマルクスが好きで彼の生き方に興味を持っている人物なので、政治的な側面は僕自身がもっと勉強しなければいけないなと思います。
-岡本さんは、役作りを綿密に行い、役に入り込むタイプなのかなと思います。今年は舞台出演も多く、間を置かずに出演している印象がありましたが、心の切り替えはどのようにしていますか。
自分の性格的に、一つのことにしか集中できないので、今回も、この作品の前に出演していた「盗まれた雷撃 パーシー・ジャクソン ミュージカル」が終わってからしっかりと台本を読むようにしました。ほかの俳優さんとお話ししていると、作品に出演中に、他の作品の台本を読んでいらっしゃる方もいるので、すごいなと思います。僕は終わってから次という感じです。
-役はすぐに抜けますか。
僕は不器用なので、すぐでもないと思います。(6月に出演した)舞台「M.バタフライ」は、特に強い役でしたし、千秋楽の次の日から「パーシー・ジャクソン」の稽古だったこともあって、稽古当初は抜けていませんでした。自分では意識はしていないのに、女性的な座り方をしていたり…、ちょっとしたところに出てしまっていたので、時間がかかるんだなとは思いました。ただ、今回は大丈夫だと思います。「パーシー・ジャクソン」が終わってからこの作品の稽古まで少し時間があったので。寝て休んでしていました(笑)。
-本作では、年齢を超えて分かり合えるレオとヴェラの関係が描かれていますが、岡本さん自身はそうした経験はありますか。
留学したときに行っていた演劇学校で出会った人たちは、年齢も育った国もバラバラで、でも同じ目標を持っていたので、いろいろなことを話し合える関係だったなと思います。授業の中で特に覚えているのが、最初に行われた試験でのボイス&スピーチという自分の声の出し方とスピーチを習う時間です。その授業では、クラスメートの前で、誰にも語ったことがないトラウマを話すように促されたんです。
何を話すかある程度考えていたのですが、実際に授業が始まると、クラスメートたちがどんどん心をオープンにして、親友が亡くなった話や母親に何かがあったときの話をしているのを聞いて、僕も用意していた話ではないトラウマを話していました。その時、泣き叫びながら話したことで、クラスメートとの信頼感が生まれたように思います。みんなが心を開いたからこそ、特別な絆ができた。なので、本作で描かれているレオとヴェラが心を徐々に開いていくことで関係性が作られていくというのは、実感を持って理解できるところがありました。
-ヴェラ役の高畑淳子さんとは本作が初共演です。岡本さんが子どもの頃にお父さんが高畑さんと共演したことがあったそうですね。
僕は全然覚えていないのですが、高畑さんからそう聞きました。その頃の僕は、人生で一番暴れん坊だった時期だと思います(笑)。ですが、そんな僕と遊んでくださっていたと。自分が覚えていない時代のことも知っている方と共演できるというのは安心感がありますし、こうして共演できることが感慨深いです。稽古が始まる前から関係性が出来上がっているような思いがあるので、他の人には見せられないようなところまで見せることができると思います。そういう意味でも本作は僕にとって楽しみな作品です。
(取材・文/嶋田真己)
舞台「4000マイルズ~旅立ちの時~」は、12月12日~28日に都内・日比谷シアタークリエで上演。公式サイト https://www.tohostage.com/4000miles/