2023年1・2月に上演される『喜劇 老後の資金がありません』の取材会が行われ、キャストの渡辺えりと室井滋が登壇した。
垣谷美雨が2015年に刊行した小説『老後の資金がありません』を、マギーの脚色・演出で舞台化した本作は、2021年に渡辺と高畑淳子のW主演で上演された。再演となる今回は渡辺が主人公の主婦・後藤篤子役を続投し、篤子の友人である神田サツキ役として室井が新たにキャスティング。老後の資金問題が次々と降りかかる平凡な主婦たちの生活を軸に、笑いと涙と希望の物語が歌や踊りを交えながらハートフルに描かれる。
「コロナ禍の上演だったにもかかわらずカーテンコールが5、6回続き、お客さまに勇気を与える作品として印象が残ったのか、すぐ再演の声がかかりました」と初演を振り返った渡辺。初参加の室井は、舞台への出演が8年ぶり。音楽劇ということもあって故郷・富山のオペラ歌手に歌を習っていることを明かすも「まだ(歌唱力は)さっぱり。がんばります!」と意気込んだ。
互いの印象を尋ねられると、渡辺は室井について「感受性が鋭くセンスを感じるような、おもしろい変化球を投げる方。私はストレートに演技するタイプだから、漫才コンビのように楽しくやれるのでは」と期待を込める。室井は「えりさんは『私に任せて!』という一面もありますが、実際はかわいらしい方。演出家でもいらっしゃるから修行のつもりでご一緒できれば」と渡辺に信頼を寄せた。
自身の演じる主人公・後藤篤子について、渡辺は「日本に生きる主婦の最大公約数みたいな人物。管理していたお金が冠婚葬祭で300万円まで減ってしまい、実は見栄っ張りでおっちょこちょいな性格だったことに気づきます」と紹介する。その篤子に節約術を授けるパン屋の神田サツキを、室井は「商売あがったりで貧しくても義母に大変なことがあっても、旦那さん命。ささやかな幸せを守るためなら、意外と悪に手を染めちゃう人物にも思えて」と分析。
これを聞いた渡辺は「家族を愛するがゆえに悪になっちゃうのは新しい解釈だね。おもしろい!」と室井に向き直り、「初演をご覧になったお客さんも『肩を寄せ合って仲睦まじく暮らしているサツキ一家の方が幸せそう』『篤子の家はちゃんとしているけど冷え切っている』とおっしゃるの。各家庭の対比が出たらおもしろそうだね!」と目を輝かせながらアイディアを口にした。
キャストは他に羽場裕一、長谷川稀世、原嘉孝、多岐川華子、一色采子、明星真由美、松本幸大(ジャニーズJr.)、宇梶剛士らが名を連ねる。公演は2023年1月14日(土)~28日(土)に、京都・南座にて。その後、2月1日(水)~19日(日)に、東京・新橋演舞場と巡演する。
取材・文:岡山朋代