2001年の発売以来、世界累計出荷・DL販売本数は2,110万本以上(2022年3月末時点)と、多くのファンを持つ『ファイナルファンタジーⅩ』。自身も大ファンという尾上菊之助が企画を立ち上げ、演出と主演も担う『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』の制作発表会見が11月29日、都内で行われた。会見には菊之助のほか中村獅童や尾上松也、坂東彦三郎、中村梅枝、中村米吉、中村橋之助、上村吉太朗ら、出演する人気歌舞伎俳優たちも登壇。同ゲームのプロデューサー、北瀬佳範氏(スクウェア・エニックス)と共に本作への意気込みを語った。

上演されるIHIステージアラウンド東京では、初の歌舞伎上演。客席を囲む360度のステージにはスクウェア・エニックスが特別に製作したCGビジュアルが8メートルの巨大スクリーンに映し出され、世界観にどっぷりと浸れる仕掛けだ。会見冒頭では、菊之助が「登場人物たちが葛藤を乗り越えて成長し、強大な敵に立ち向かう姿が、このコロナ禍と戦争の世界に強いメッセージを届けられると感じました。私自身が『ファイナルファンタジーⅩ』に救われたように、今の日本、そしてエンターテインメントの世界に“元気”を届けられれば」と熱く語った。

今回は「前編」を昼の部、「後編」を夜の部として、1日9時間をかけて物語の最後まで上演。少年ティーダ(菊之助)が少女ユウナ(米吉)に出会い、グアド族の族長シーモア(松也)に追い詰められながらも、意外な結末を迎えるまでを描く。ティーダの父の盟友アーロンを演じる獅童は、「菊之助さんから熱いオファーをいただけたのが嬉しかった。お互いに意見を出しながら作っています」と感慨深げ。松也も「衣裳を着けての撮影ではアイデアを出し合ったりと、高揚感が高まりました」と興奮を隠し切れない様子だ。

さらに、ユウナを守るキマリ役の彦三郎は「衣裳を着けた写真を松也さんに送ったら『誰?』と言われて。ハマってるんだなと自信を持ちました」と笑わせ、魔道士ルール―役の梅枝も「ゲームはもう5周はやっています」と熱い想いを示しつつ、「原作に敬意をもって演じたい」と意気込んだ。
ユウナ役の米吉は「ユウナというヒロインが魅力的であればあるほど物語が面白く、切なくなると思うので少しでも原作に近づきたい」と真剣に語りつつ、「衣裳姿を見た彦三郎さんに『胸が小さい』と言われたので、まずはビジュアルから工夫を…」と明かし、取材陣から笑いが。ユウナをガードする青年ワッカ役の橋之助は「ワッカらしくのびのびと楽しく演じたい」、アルベ族の少女リュック役の吉太朗も「重要な役なので大切につとめたいです」と笑顔を見せた。
今回、菊之助から直接オファーをもらったという北瀬氏は「ストーリーやキャラクターを理解してくださった上で『こう表現したい』と話されていると感じました」と話し、絶大な信頼を寄せている様子。ゲームの歌舞伎化という史上初の挑戦。その行方を期待と共に見届けたい。

取材・文/藤野さくら