1981年、神戸市によって設立。2021年には世界的なチェリスト、指揮者の鈴木秀美が音楽監督に就任し、古典派音楽を中心に多彩な演奏活動を続けている神戸市室内管弦楽団。その第156回定期演奏会が、2023年、2月11日(土・祝)に神戸文化ホール大ホールで行われる。前半に18世紀古典派のモーツァルト、そして後半には20世紀のシュニトケやプロコフィエフの作品を置くという同団ならではプログラム。題して「音の謎かけ」である。
「20世紀のプロコフィエフやシュニトケが18世紀古典派の音楽をどのように聴いて、また影響を受けて作曲したのか。そんな『謎』を考えながら楽しんでみましょう、というのが私たちの狙いです。そもそも彼らはどこでどんなハイドンやモーツァルトを聴いていたのか」。そう語るのは今回の指揮を務める鈴木秀美。20世紀の後半から今日まで、クラシック音楽の演奏は多くの検証を経てスタイルを変えてきた。ではロマン派演奏の影響下にあった20世紀前半から中盤にかけての古典派作品は当時の作曲家たちにどのように受け止められ、どんな風に反映されてきたのか。タイムマシンで少し音楽史を遡るような遊び心も感じさせながら、それぞれの作品が素晴らしい。前半の2曲がモーツァルトの時代独特の音楽である“セレナード”(夜曲)であることも、こだわりの選曲。『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』では指揮を置かず、鈴木監督自身もオーケストラの中でチェロを弾く。その味わいを感じながらのプロコフィエフとシュニトケである。
「例えばプロコフィエフの交響曲第1番は『古典』という題名が付いていたりハイドンを意識して書かれたということですが、これがけっこうプロコフィエフ自身の音楽だったりする。じゃあここには何がどう混ざっているんだろう、みたいなことを考えてみるわけです。またシュニトケの作品はステージ上の動きを伴う前衛的な作品ですが、聴こえてくる細かいモチーフはハイドンのように、またモーツァルトのように聴こえます。ちょっと歪んだガラス越しに古典派の音楽を眺めるような感じもあって、そのあたりの面白さを感じていただけるとうれしいですね」。
2月13日(月)には紀尾井ホールで東京特別演奏会も行われる。音楽監督就任から2年、全国から注目を集める神戸市室内管弦楽団の現在について、鈴木秀美は「神戸において私たちの個性が育ちつつあるところ」と語っている。
取材・文:逢坂聖也