石黒英雄 (C)エンタメOVO

 「HERO」や「アンフェア」シリーズの秦建日子が書き下ろす、新作オリジナル舞台「トムラウシ」が、2月4日から上演される。不当逮捕された人気絶頂の俳優・大和仁が、雪山の「トムラウシ監獄」へ送られたことから始まる本作は、サスペンス要素のあるストーリーを軸にしたストレートプレーの芝居に、和太鼓の生演奏をフィーチャーした新しいエンターテインメント作品だ。主演するのは、「ウルトラマンオーブ」などで知られる石黒英雄。石黒に本作の見どころや鋭意稽古中という和太鼓についてなどを聞いた。

-出演が決まったときの心境を教えてください。

 以前から、映像、舞台を問わず、自分の力を出したいという気持ちが強かったので、主演というお話を頂けたのはとてもうれしかったです。やはり主演という立場でしかできない見せ方があると思いますので、今の僕の年齢でどこまでできるんだろうと、試したい気持ちもありますし、これまで自分が培ってきたものを芝居として出せる機会が頂けたのはありがたいと思っています。

-これまで映像作品を中心に活躍してきましたが、舞台での主演ということについてはどう感じていますか。

 映像だから、舞台だからという考えはないです。これまでにも舞台作品に出演させていただいていますので。その際に、培ってきたものもありましたし、自分の中で反省点もたくさん見つかったので、また挑戦したい思いはあったのですが、コロナ禍で結局、舞台に立つ機会がなかなかないまま過ごしてきました。今回、エンターテインメントの復活の兆しが見えてきているというとてもいいタイミングでお話をいただけたと思っています。

-本作は、秦さんの書き下ろしになりますが、脚本を読んだ率直な感想は?

 監獄の中のシステムをすごく丁寧に説明している作品だなと感じました。それから、ヒロインの心情も深く描かれているので、それに合わせて大和を演じなければいけないなと思いました。

-石黒さんが演じる、大和仁という人物については、今はどう感じていますか。

 超絶人気俳優として活躍している最中に監獄に入ることになってしまうという役です。ちやほやされていた生活から監獄で暮らすことになるという落差を表現しつつ、そこでどう生き残っていくのかを考えながら周りの人と接していく姿を自分の味を出しながら演じていけたらと思っております。

-大和の心情を理解できるところはありますか。

 自分は超絶人気俳優ではありませんが(笑)、うまくいかない時期もあったので、そういう心情はある程度、理解はできます。

-今回は、和太鼓の演奏もあると聞いていますが。

 物語の最後に演奏シーンがあるので、12月頃から共演者の皆さんと一緒に練習しています。非常に楽しいですよ。肩の筋肉もいい感じについて、自分としてはいいエクササイズになっていると感じています。

-もともと、和太鼓に興味があったのですか。

 旅番組に出演したときに、佐渡島を拠点にしている「鼓童」という太鼓集団とご一緒したことがあったんです。そのときに太鼓の楽しさを知り、いつかたたいてみたいと思っていました。今回、芝居をしながら太鼓もたたけると聞いて、刺激的で、新しい挑戦ができると思い、すごく楽しみでした。

-本作の見どころは?

 脚本から感じた監獄の雰囲気を、どれだけ深堀りできるかを一番の課題にしておりますので、それをうまく表現できたらと思っております。太鼓がこの作品のスパイスになっていると思いますが、監獄の中での人間関係も太鼓に負けないぐらい力強さを出して表現できたらと思っておりますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

-角田信朗さんと宮迫博之さんがダブルキャストで出演するというのも面白いですね。

 (取材当時は)まだお会いしたことがないですし、稽古がどうなるかも分かりませんが、お二方が舞台に出てくださるのはすごくありがたいですし、ご一緒できるのが楽しみです。

-ところで、本作は北海道のトムラウシ山を舞台にしていますが、北海道にまつわる思い出はありますか。

 母親が北海道出身なので、子どもの頃はスキーをしに行っていました。それから、仕事で札幌に行ったときに、「だるま」という有名なお店でジンギスカンを食べたことが印象に残っています。とにかくおいしかったので、また札幌に行く機会があったらぜひ食べにいきたいですね。

-では、もしも大和の立場だったらどうしますか。

 大和は100年という刑期を言い渡されるので、まず、その長さに絶望すると思います。ただ、その後は、とりあえず監獄で一緒の部屋の人たちと仲良くすると思います。人間は一人じゃやっていけないと思うので。大和は、監獄の中でも腐らずに日々を過ごしていますが、それってすごいことですよね。それもやっぱり一人ではなかったからなのかなと思います。

-石黒さんは、誰とでもコミュニケーションは取れるタイプですか?

 そうですね。どなたとでも話はできます。映像の仕事は、特に初めて共演する方とご一緒する機会も多いので、初めての方とお話しすることも多いんですよ。以前に共演したことがある方でも、役柄も場所も変わるので、非常に新鮮ですし、(そうした仕事は)自分の性格に合っていると思います。

-2023年がスタートしましたが、22年を振り返ると、石黒さんにとってどんな1年でしたか。

 中国でのエージェント契約が決まったり、いろいろな仕事が動いた年だったので、自分にとっては感謝の年になったと思います。来年はさらに飛躍する年にしたいと思っております。

-今年の目標や、やりたいことは?

 日頃の感謝を感じつつ、周りの方とのつながりを大事にして、今いる自分の仕事に感謝を持って臨んでいきたいと思います。プライベートでは、2022年は旅をすることがあまりできなかったので、今年はいろいろな場所に行って、たくさんの方と接して、自分の知識や見識を広げていきたいと思っております。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「トムラウシ」は、2月4日~12日に、都内・自由劇場で上演。
公式サイト http://askcoltd.com/tomuraushi-stage/