時給換算は「あまり考えたくないですね(笑)」
――そうすると、給料は時給換算するとどれくらいになりますか?
「あまり考えたくないですね。(笑) もしかしたら最低賃金並かもしれません」
――けっこう厳しいんですね。なぜ、そんなに低くなってしまうんですか?
「神職は、日常と仕事の境界が曖昧なんですよ。同業者はみな言いますが、プライベートであってプライベートじゃない、と。
例えば、大きなお祭りの前には必ず、神社に一晩泊まって清らかな場所に身を置きます。肉を食べず精進料理のような穢れのないものを食べて、朝起きて水を被って身を清めて、大きな祭礼に臨むんですね。これも考え方によっては仕事の一部だと思うんです」
――そうですよね、それをやらなければ仕事(祭祀)ができないわけですから。
「でも私からすると、仕事が終わって、外出しないでお籠もりして、食べ物に気をつけて、水を被るなんて、神職として当然であって、仕事じゃないんですね。これらを仕事と言うか、言わないかによって、ずいぶん変わってきます。
あとは、自宅と神社の電話番号が同じだと、夜中に氏子さんから電話がかかってきて、「お袋が亡くなったので葬式をやりたいのですが」という相談なんかもあるわけです。
神社や神職によって様々で、いろいろな相談を受けるケースもあります。日常と仕事の境界は本当に曖昧です。こういうものまで含めて仕事とみなすと、時給換算ではかなり低くなってしまいます」
収入が多かったとしても給料には反映されない理由
――給料はどうやって決まるのですか?
「神職の給料は、神社本庁の規定で決められているんですよ。役職と級号によって変わります。長く勤めていたり、役職があがったりすれば昇給するのは、一般企業と同じです。一番もらえる人で、月給60万円。大きい神社の宮司だからと言って、好き勝手に収入を増やせるわけではありません。
――なるほど、厳格なんですね。抜け道はないんでしょうか? たとえば基本給以外に、特別手当をもらったりとか。
「神社によってはそういうところもあると聞いたことはあります。ただ、ごく一部だと思います。上限の60万円をもらっている宮司も、全国的に見ても本当に少ないです。
私たちのような規模の神社の大半は、多くて月給30万円から40万円程度ではないでしょうか。30代半ばで年収300万円に届かない神主も珍しくないと思いますよ。それどころか、神社によっては専業が成り立たず、兼業せざるを得ないケースも少なくありません」