――給料は高いとは言えないようですし、仕事内容もけっして楽ではありませんよね。それでも熱心に仕事に励むことができるのは、なぜですか? たとえば、改めて見て驚いたのですが、広い境内なのにゴミがまったく落ちていません。
「神職は“なかとりもち”だとよく言うんですね。神さまに仕える身であり、神さまのご意志だとか、思いだとか、徳を、人間へ伝える。逆に、人間の願いだとか、「神さまに助けてほしい」という思いを神さまへ伝える。神さまと人間のあいだを執り持つ、“なかとりもち”です。
なんでこういう仕事をしてるんですか? 誰も見ていなのにお金と労力を費やすんですか? と聞かれることもあるんです。確かに、サボろうと思えばサボれる部分もあります。手を抜かずにやったからと言って、収入が増えるわけでもありませんし。
それでも一所懸命やるのは、神さまの力が、みなさんにより一層伝わりやすい状態をつくって、お参りに来た人が神さまとのご縁をもらって、幸せな生活をしたり、神さまへの気持ちを高めたりする結果になってほしいな、という思いがあるからなんです。
朝の掃除をすることも、ご祈祷することも、いろいろなことが、神さまと人間の縁をつけたい、という思いに繋がっています」
神主は“神事”のプロフェッショナル
――私がよく思うのは、仏教で言えばお坊さんがいないと、葬式のやり方、故人の供養の仕方がわからない。神主さんも同じで、神主さんがいなかったら、日本の神さまとどう接していいかわからないですよね。
「極端なことを言ってしまえば、神さまと人間の関係なので、神社がなくても神道は成立すると思っています。でも、神さまは目に見えませんし、どういうものか分からないわけです。神さまとどう付き合ったり向き合ったりすればいいのか分からない人と神さまを繋げるのが、神主であり、神社という場所なんだと思います。
神さまを信じていない人や、神社に特別な思いがない方でも、こどものお宮参りや七五三のとき、安産祈願、車を買ったときの安全祈願のときには、電話を掛けてきたり、メールで尋ねてきたりしますよ。神社は、日本人の、宗教的な意識がないような身近な部分に結びついていますね」
インタビューは以上です。千勝神社の千勝満彦さん、どうもありがとうございました!
たまには神社で神主さんと話してみては?
私自身、子供が生まれたときに、お宮参りはいつ行ったらいいのかとか、祈祷料はどれくらい払ったらいいのかとか、ずいぶん調べました。近所に神社がなかったので、主にネットで検索しましたが、もし日常的に仲良くしている神主さんが地域にいたら相談していたと思います。
お話を伺うまでは意識していませんでしたが、神さまを信じる信じないとは別に、私たちは神主さんを必要としているんですね。私たちが意識しているときも、していないときも、神主さんは準備を万端に整えて待ってくださっています。今度、神社へ行く機会があったら、神主さんに話しかけてみてはいかがでしょうか!