新国立劇場25周年記念公演ヴェルディ《アイーダ》が4月5日(水)高らかに幕を開けた。
25年前、大巨匠フランコ・ゼッフィレッリが新国立劇場のオープニング・シリーズために制作した絢爛豪華なプロダクション。以来5年ごとに上演を繰り返している、劇場の目玉レパートリーで、これで6度目の上演だ。
この数年間に新国立劇場を訪れた人なら、エントランスに展示されている《アイーダ》舞台装置が絶好の撮影スポットだったのをご存知のはず。あれがそのまま舞台で使われているわけだ(なので現在エントランスのほうには「展示入れ替え中」の貼り紙が)。
ゼッフィレッリ演出はやはり圧巻。象徴は言わずもがな、第2幕「凱旋の場」の大スペクタクル。舞台上に総勢300人が密に並ぶさまはコロナ拡大中には見られなかった光景だ。大合唱の声の圧に押されながら、オペラ完全復活をひしひしと感じるのはうれしい。おなじみの本物の馬も! すでに“伝説”となっているこの舞台。2019年に他界したゼッフィレッリと新国立劇場が残した、世界のオペラ界に誇れる偉業だと思う。
壮麗な舞台に目を奪われずにはいられないが、音楽だけとってもヴェルディ円熟の極みにある傑作。前奏曲が鳴り始めた瞬間から、シンフォニックで有機的な音楽の線が次々に紡がれて緊張感が途切れることなく、4時間弱(休憩含む)の上演時間があっというまに感じる。
キャストも充実。アイーダ役のセレーナ・ファルノッキア(ソプラノ)は、リリックで細身の声がこの役では新鮮。第2幕のアリア〈私のふるさとよ〉の、コントロールされた繊細なピアニッシモの高音(C)がじつに印象的に響いた。豊かでふくよかな声と表現に引き込まれたのが、アムネリス役のアイリーン・ロバーツ(メゾ・ソプラノ)。感情の振り幅の大きいこの恋敵あってこそのアイーダ。両者の理想的な対照だった。そしてラダメス役のロベルト・アロニカ。新国立劇場芸術監督の大野和士が「今イタリアで3本の指に入る美声」と賞するテノールは、圧倒的な声量、輝かしい高音。のみならず、中域までつややかな響きを失わない。一本気な勇将の情熱と絶望を見事に歌った。1998年初演時のオリジナル・キャストで、ほぼ全回ランフィス役を歌っている妻屋秀和(バス)ら日本人歌手陣も贅沢な適材適所だ。
深い感動を、じつに率直に得られる名プロダクション。それは何度見ても変わらない。残席僅少。今すぐチェック!
(宮本明)
■ぴあスペシャルデー(ぴあ貸切公演)
対象公演日:4/13(木) 14:00開演
新国立劇場 オペラパレス (東京都)