『search #サーチ2』

『search #サーチ2』(4月14日公開)

 米ロサンゼルスから遠く離れた南米コロンビアを旅行中に、婚約者と共に突然消息を絶った母(ニア・ロング)。デジタルネイティブ世代である高校生の娘ジューン(ストーム・リード)は、検索サイトや代行サービス、SNSなど、使い慣れたサイトやアプリを駆使して母の捜索を試みる。

 Googleの位置情報や監視カメラ、銀行やクレジットカードの出入金記録など、人々の行動や生活がデジタル上で記録されている今の時代、母を見つけることは容易かと思われたが、一向に行方を知ることができない。そればかりか、母や婚約者に関する不穏な情報も流れ始める。それでも何とか母の行方をつかもうとするジューンだったが…。

 パソコンの画面上で物語が展開していくという斬新なアイデアと巧みなストーリーテリングで評判を呼んだサスペンススリラー『search サーチ』(18)のシリーズ第2弾。

 前作の監督・脚本のアニーシュ・チャガンティが原案・製作に回り、前作の編集を担当したウィル・メリックとニック・ジョンソンが共同で監督した。今回もほぼ全編がデジタルプラットホーム上で展開する。前作は父が娘について調べたが、今回は娘が母について調べる。娘にうっとうしく思われながらも、母が過保護になる理由が事件の鍵を握る。

 前作以上に二転三転するストーリー、さまざまなサイトやアプリを駆使して目まぐるしい展開を見せるが、これがまた面白い。黒人、白人、ヒスパニック、アジア系といったさまざまな人種の人たちが登場するのも、いかにも現代風。中でも、何かとジューンを助けるコロンビアの仕事代行サービス業のハビを演じたホアキン・デ・アルメイダがもうけ役だ。

 加えて、この映画はジューンが次々に開くサイトやアプリの画面がいくつも交錯して目の前に広がるのだが、これを大画面のスクリーンで見ることで、情報量の多さやスピードの速さに付いていくことができる。これも何だか皮肉っぽくて面白い。

 前作から本作への5年の間に、SNSやネットサービスは発展し、コロナ禍でデジタルネットワークへの依存はさらに強まった。だが、それは便利ではあるが、同時に怖さもはらんでいる。この映画で描かれたように、調べようと思えば、個人の行動や情報は丸分かり。捜索には役立つが、プライバシーなどなきに等しい。いわばもろ刃のつるぎなのだ。そこに、前作に影響を受けたと思われる日本の『#マンホール』(23)との共通性を見ることもできる。

『ダークグラス』(4月7日公開)

 伊ローマで娼婦ばかりを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生する。4人目のターゲットとなったコールガールのディアナ(イレニア・パストレッリ)は、ある夜、謎の人物にしつこく追い駆けられた末に、後ろから車に追突される大事故に遭う。

 一命はとりとめたものの両目の視力を失ったディアナは、同じ事故に巻き込まれて両親を亡くした中国人少年のチンとの間に特別な絆が生まれ、2人は一緒に暮らすことになる。だが、そんな彼女たちを殺人鬼が付け狙う。

 『サスペリア』(77)『フェノミナ』(85)などで知られるイタリアンホラー(ジャッロ)界を代表するダリオ・アルジェントが、10年ぶりに撮った監督作。事故で視力を失ったヒロインがサイコパスな殺人鬼に脅かされる“見えない恐怖”を描く。

 キーワードは、日食、サングラス、鮮血、ナイフ、犬、盲目、娼婦、少年…。アルジェント監督の娘のアーシアも、ディアナを支える歩行訓練士役で出演している。

 アルジェント映画の特徴の一つである、独特の映像美と印象的な音楽で見せるという手法は全く変わっていなかった。ある意味、無類の頑固者。特に今回のアルノー・ルボチーニの音楽は、『サスペリア』のゴブリンをほうふつとさせるものがあった。

 ストーリー的には、『暗くなるまで待って』(67)と『グロリア』(80)を足して二で割ったような印象で、往年のアルジェント映画に比べれば、残酷描写も含めて随分緩くなっている気もするが、80歳を過ぎて、まだこういう映画が撮れることに驚かされた。

(田中雄二)