「どうする家康」第15回から (C)NHK

 NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」。4月23日に放送された第15回「姉川でどうする!」では、主人公・徳川家康(松本潤)が織田信長(岡田准一)と共に浅井長政・朝倉義景の連合軍と戦う「姉川の戦い」が描かれた。

 両軍が川を挟んで対峙(たいじ)する中、敵対する浅井長政(大貫勇輔)から、「信長に義はない。共に信長を討ち取ろう」という密書を受け取った家康は、このまま信長と共に戦うか、裏切って浅井・朝倉に味方するかの決断を迫られる。このときの家臣団とのやり取りが、この回の白眉だった。

 一度は「わしは浅井長政につく。織田信長を討つ。今なら討てる!」と力強く宣言した家康。だが、「これは、われらと織田勢を引き裂かんとする浅井の策略。乗ってはいけませぬ」「その通り、われらが織田勢に矛先を向け、朝倉に背を向けた途端、後ろから撃たれる」という酒井忠次(大森南朋)や榊原康政(杉野遥亮)の進言を受け、ちゅうちょする。

 浅井に味方することを勧める本多忠勝(山田裕貴)、どちらか決めかねる鳥居元忠(音尾琢真)など、意見が割れる中、浅井・朝倉の進軍が始まり、織田陣からは攻撃開始の合図であるほら貝が響く。

 ここで「わしは、浅井につきたい!」と再び告げる家康。だがその理由を尋ねられると「浅井殿が好きだからじゃ。あの方は立派なお方じゃ。人をわなにはめたりはせぬ!」と個人的な感情が先走ることに。

 当然、それでは誰も納得せず、結論を出せずにいると、今度は織田から催促の銃撃が。やがて、沈黙していた石川数正(松重豊)が「今なら信長を倒せます。しかし、倒した後、どうするのか。信長亡き後、将軍は、天下はどうなるのか?」と口を開く。

 それを受けた忠次が「おそらく、あの桶狭間の後のぐっちゃぐっちゃに逆戻りじゃな」と続くと、最後は数正の「殿、あのぐっちゃぐっちゃをもう一度、やりますか。もう一度やって生き延びられるとお思いでござるか?」という言葉が決定打となり、家康は信長と共に浅井・朝倉軍と戦うことを決断する。

 当然、史実に基づく物語なので、結論は最初から見えている。それでも、このときの家康が選択し得るあらゆる可能性を提示した上で、いかに決断を下すかという緊迫感あふれるドラマを作り上げた。

 さらに、個人的な感情が先走る家康には主君として未熟な部分があること、それと同時に、家臣たちの言葉に耳を貸す懐の深さがあることなど、その微妙な人物像まで浮き彫りにしてみせた。この間、およそ9分。登場人物それぞれの個性を生かした鮮やかな会話劇だった。

 それは、さながら家康のブレーンストーミングといった様子。これまでも何度か繰り返されてきた展開だが、これを積み重ねることで、家康は少しずつ成長していくに違いない。その家臣たちのやり取りは物語が進むにつれ、どう変わっていくのだろうか。そこに注目すると、新たな作品の魅力を発見できるに違いない。

(井上健一)