本田望結(スタイリスト:石川奈央/ヘアメーク:牧野裕大(ヴィエルジュ)) (C)エンタメOVO

 76歳の織田桃次郎(藤竜也)は、高校時代にラグビー部でマネジャーを務めたサクラが経営するデイサービス会社を倒産の危機から救うため、元ラグビー部の仲間を集めてゲートボール大会に出場し、施設の知名度を上げることを考えるが…。大ベテラン俳優たちが共演する人情コメディー『それいけ!ゲートボールさくら組』が5月12日から全国公開される。本作で桃次郎たちにゲートボールを教える高校生の嶋田七海を演じた本田望結に話を聞いた。

-この映画の台本を最初に読んだときの印象は?

 この作品のお話を最初に聞いたのは2年ぐらい前でした。私も高校生だったので、まず、自分と同年齢の子を演じられることがとてもうれしかったですし、藤竜也さんと共演できるというインパクトがすご過ぎて、ぜひ台本を読ませてくださいとお願いしたことを覚えています。台本を読むと、作品の大きなテーマが「幾つになっても、何かを始めることに遅いということはない」で、そういうメッセージを込めた映画にしたいということでした。その中で、私が演じる役が、藤竜也さんをはじめとする皆さんにゲートボールの楽しさを教えるというものだったので、まずはそのルールをしっかりと覚えるところからスタートしました。

-嶋田七海という役を、どのように演じようと思いましたか。

 七海は、勝つことがとても好きな子だなと思いました。(野田孝則)監督に初めてお会いしたときも「望結ちゃん、こんなに口の悪い役いけるの?」と言われて、その場でとてもきつい言葉を言ってみました。監督は私にそういうイメージを持っていなかったようですが、私自身はこういう役がとても好きでした。それと、七海は、常に周りを見ている子だなと思ったので、せりふがないところで、そうした感じが出せればいいなと思いました。

-今回、藤竜也さんをはじめ、大ベテランの方たちと共演した感想を。

 皆さんが年上の大先輩方でした。私は、自分より年下の方が出る作品にはほとんど出たことがなく、年上の人たちがいる現場が当たり前だったのですが、先輩方と共演できることが素直にうれしかったです。皆さん、私を全く子ども扱いしない方たちで、ちゃんと正面からお話をしてくださって、ぶつかってきてくださったので、とても演じやすかったです。

-大先輩の皆さんを叱るシーンもありましたが、緊張したりはしませんでしたか。

 役に入ると緊張はしません。ただ、私は普段から結構周りを引っ張りたいタイプで、演技に入ると、行き過ぎてしまうところがあって、「望結ちゃんは本当にこういう性格なんだ」と藤さんたちに思われてしまうので、いつも以上に一つ一つの言葉を意識しながら話していました。普段は役とは違うというところを伝えたいと思ったので、オフの方をとても意識しました。

-この作品から感じたことや受け取ったメッセージは何かありましたか。

 完成した映画を見て、「人生には、遅過ぎることなんて一つもない」という言葉が、とても伝わったなと思いました。どの世界でも、スタートが若ければ若いほどいいと思われがちですが、私はそうは思わなくて、何歳で始めようが、その出会いは奇跡だし、頑張れば頑張るほど、その奇跡が必然になっていくと思います。この映画を見て「やってみたかったことをやってみよう」と思ってくださる方がいたら、100点の映画になると思います。やる気が出るような熱い映画なので、そのメッセージは必ず皆さんにも伝わると思います。

-最近始めたことやこれから始めてみたいと思っていることはありますか。

 この作品のお話を頂いた頃に、ちょうどゴルフを始めました。でも、ゲートボールとゴルフは似ているようで全く違うものなので、むしろ片方の悪い癖が出てしまうようなところがあります。なので、撮影中はゴルフのことは忘れて、ゲートボールの動きに集中しました。映画の撮影が終わって、ゴルフに行ったときに、ゲートボールの癖が出て、ドライバーもパターのような持ち方になってしまいました。両親には「ゲートボールの作品を撮ったので…」と必死に言い訳をしました。

-本田さんは俳優でもありフィギュアスケーターでもあります。この映画のゲートボールも一種のスポーツですが、実際にプレーしてみてどう思いましたか。

 とても魅力的だと思いました。ゲートボールに関しては、やる前は簡単だと思っていました。でも、まんまとだまされました。皆さんから「やってみたらハマるから」と言われましたが、まさしくその通りでした。単純に見えてとても難しいし、簡単そうに見えるスポーツだからこそ、幾つから始めるかはあまり関係ありませんし、若ければいいというものでもありません。なので、これはもっと有名になってほしいスポーツだと思いました。協会の方も「この映画をきっかけにもっとゲートボールを広めていきたい」とおっしゃっていました。ゲートボールの魅力は、やってみないと分からないので、映画のチケットと一緒に、ゲートボールの券も配ってほしいと思いました。

-女優とフィギュアスケーターとの“二刀流”ですが、今後の展開についてはどう考えていますか。

 二刀流だと思ったことは一度もなくて、今はフィギュアのことは一切忘れています。女優の本田望結に皆さんが会いにきてくださっているので。逆に、夜になってスケートの時間になったら、お芝居のことは一切忘れて没頭します。だから本田望結が2人いる感覚なんです。ただ、二刀流と思ったことがないというのは、逃げの言葉なのかもしれません。私は二刀流ができていないということを認めたくないから。でも、ここまで両方続けられているのだから、過去の自分に失礼にならないように、未来の自分にも大好きな二つのことを続けていってほしいです。

-最後に、観客に向けて映画の見どころなどをお願いします。

 何か笑いたいなと思っている人も、ちょっと毎日が楽しくないなと思っている人も、誰が見ても嫌な気持ちにならない作品です。みんなが穏やかになって、気軽にあーよかったと思えるので、どの世代の方にも響くと思います。この作品を機に、新たなことへのチャレンジを始めてもらえたらうれしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)