舞台『私のホストちゃん』より。山本裕典 舞台『私のホストちゃん』より。山本裕典

モバイルゲーム、ドラマと人気を博した『私のホストちゃん』が、ついに舞台化。10月25日、東京・青山劇場で開幕した。総合プロデュースを務めるのは、ドラマ版の演出、構成も手がけた鈴木おさむ。演出は「拙者ムニエル」の村上大樹が担当する。

舞台『私のホストちゃん』チケット情報

兄の治療費300万円を稼ぐため、新宿歌舞伎町にあるCLUB Vanillaでホストとして働くことになった霧都。“一匹狼系”や“王子様系”など、さまざまなタイプのホストがいる中、霧都は新オーナーになった木月から、そのままの自分で勝負するよう諭される。その後“真っすぐ系”ホストとして、CLUB Vanillaに新風を巻き起こしていく霧都。しかしそこに、ニューヨーク仕込みのパフォーマンスで客を魅了する、新人ホストの影規が現れる。またそのころ、大阪ミナミを拠点とする、CLUB Vividが歌舞伎町に進出して……。

舞台であれ、ホストクラブであれ、客を楽しませるエンターテインメントであるという点で、このふたつは非常に似通ったものなのかもしれない。それは劇中の、「ホストクラブは舞台、ホストは役者」というせりふにもよく表れている。しかも本作では、そのふたつが見事にドッキング。観客は芝居、歌、ダンスと華やかなステージを楽しめるのはもちろん、イケメン俳優たちから、まるでホストクラブのように直接口説いてもらうことすらできるのだ。

ホスト=チャラいというイメージもあるかもしれないが、本作で展開されるのは、その逆をいくような男たちの熱血ドラマ。登場人物たちはそれぞれ悩み、戸惑い、それでも前に向かって足を踏み出していく。特に“一番”にこだわる彼らの姿は、現代人が忘れかけていた“アツさ”を思い起こさせてくれるようだった。

霧都役の山本裕典は、ピュアな新人ホスト役を好演。影規役の松下優也の歌、ダンスのキレ味は、やはり全キャストの中でNo.1だ。また木月役の貴水博之ほか、ダイアモンド☆ユカイ、池谷のぶえ、香寿たつきらベテランが脇を固め、ドラマ版から引き続き甘王役を演じたオキャディーが、笑いどころをしっかりと押さえる。

そして本作最大のポイントが、“ホストランキング制度”を導入しており、観客がお気に入りのホストに貢げること。その結果ははっきり数字として表れ、作品のエンディングをも左右する。ちなみに初日25日のNo.1ホストに輝いたのは、山本、松下という2トップを打ち破った悠也役の上鶴徹。このような大番狂わせを味わえるのも、『私のホストちゃん』の醍醐味だと言えるだろう。

公演は11月4日(月・祝)まで。チケット発売中。

取材・文:野上瑠美子