――演じるキャラクターと自分の似てる、似ていないの擦り合わせやそのバランスはどのようにとっていくんですか?

『君は放課後インソムニア』©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会

最初のうちは分からなかった自分と似ているところが演じているうちに分かってくる。やっていると、自分がだんだん分かっていくのが分かってくるんです。

奥平 へ~、面白い!

そうなったときにやっと、自分との距離ができ始めて、発想や考え方もその人になっているときがあるんですよね。

それこそ、この撮影中も伊咲に染まっていたから、ロケをしていた石川県で、劇中の彼女とまったく同じ靴を知らないうちに買っていて。あれには自分でもビックリしました(笑)。

奥平 スゴ~!

自由に考えたことがいつの間にか伊咲の考えになっていたので、そこを大きくしていく。そんな感じでしたね。

奥平 確かに役に対しての理解度は増したような気がします。

撮影の最初のうちは役がつかめなかったり、共演者のみんなの空気感が分からないところも多少あって、そこは監督と擦り合わせていったけれど、振り返ると、僕もあの期間は丸太として生きていた感覚があります。

でも、悔しいんですよね。撮影が終わるころに役のことが分かる状態になっているというのは。

――お互いの役について、おふたりで話し合うようなことは?

『君は放課後インソムニア』©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会

奥平 まったくないよね。

本当になかった。

奥平 現場でやってみないと、お互い分からなかったですから。

伊咲がどう出てくるかによって、自分の芝居も変わるし、その逆もあったと思うので、話し合うというよりは、やりながら、こういう感じか、こういう感じかっていうのを、僕らもそうだし、監督もつかんでいかれたんじゃないでしょうか。

もう芝居をしているって感じじゃなかった

――そういうやり方をしたとは思えないぐらい、伊咲と丸太の距離感も絶妙で、とても自然でしたけど、おふたりは今回が初共演ですか?

いえ、2回目です。

奥平 でも、前の作品ではそんなに話さなかったから、今回が初共演みたいな感じです。

前は「世にも奇妙な物語 ’21 秋の特別編」(21)の中の1編「優等生」で共演したんですけど、そのときは壁越しのお芝居だったんです。

奥平 ああ、そうだったね。

でも、けっこうドラマチックな話で抑揚のある展開だったから、声だけでもインパクトがあって、スゴいな~って思ったんですよね。

そのときと比べると、お互いの表情を見ながら、リアルな生活の中で会話をする今回は、いい意味で手応えがなくて(笑)。

もう芝居をしているって感じじゃなく、「よ~い、スタート!」ってかかる前の、待ち時間の雑談の続きみたいな雰囲気で喋っていたんです。

そういう、いつも通りのお芝居もできるのが奥平くんのスゴいところだし、自分もやりやすかったので、ありがたかったですね。

奥平 僕も同じかな。前のドラマの森さんは明るい役だったじゃん。

そうだね。