ふたりにとって心が安らぐ場所とは?

――ところで、伊咲と丸太にとっての天文台のような、おふたりの心が安らぐ場所はどこですか?

地元の大分ですかね。大分は最近3年ぶりぐらいに帰って、それから頻繁に帰っているんですけど、生まれ育った場所はやっぱり居心地がいいですね。

両親も東京に引っ越したので、もう家もないんですけど、昔よく遊んでいた友だちの家に行ったり、友だちが運転する車に乗るとすごく気持ちが安らぎます。

奥平 僕は家ですね。家から出るのがあまり好きじゃないし、自分の部屋に僕が好きなものが揃っているので、外に出る必要がなくて。

だから、友だちと遊ぶときも『ミッドサマー』(19/監督:アリ・アスター)のような大好きな宗教系のホラー映画を一緒に観たりします。逆に、外に出てやることってある?

いや、私はけっこう外に出ないからな~。

奥平 でしょ。ないよね? ごはん食べに行こうとも思わないし、買い物に行こうって気持ちにもならないから、そうなると…。

ごはんも食べに行かないの?

奥平 行かない、行かない。家でごはんを作る。

自分で?

奥平 自分で作る。まあ、人がくればね。でも、そんな感じだから、友だちを作れないんだよね。

なので結局、昔から仲のいい友だちしか呼べないんですよ。

『君は放課後インソムニア』©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会

今後絶対にやってみたいなと思っていること

――最後に劇中のシーンと絡めて、今までに経験していないことで、今後絶対にやってみたいなと思っていることを教えてください。

奥平 水族館とかじゃなくて、海でクジラに会いたいです。クジラってどこか神秘的じゃないですか? 僕、クジラの鳴き声がめちゃくちゃ好きで。

なぜか気持ちが落ち着くから、クジラの声を聞きながら寝たりするのにハマったこともあるんですけど、それを生で聞きたいですね。

――そのためには、外に出なきゃダメですね(笑)。

奥平 確かにそうですね。家にクジラは来てくれないですものね。

クジラに「遊んでもいいけれど、家に来て」って言えば(笑)。

奥平 で、友だちを呼ぶときに、「クジラがいるけど、大丈夫?」って聞いたりして(笑)。でも、野生のクジラに会えるなら家を出てもいいですね。

私は“君ソム”のみんなとお花見をしたいですね。今年はなかなか勇気が出なくてメールを打てなかったんですけど、いつか行けたらいいですね。

懐かしそうに1年前の撮影を振り返ってくれたふたりは、劇中のやりとりを自然に思い出してしまうぐらい息がピッタリ!

映画はそんな彼らが命を吹き込んだ伊咲と丸太が、七つ橋(七尾市)や見附島(別名「軍艦島」/珠洲市)、真脇遺跡(能登町)など漫画と同じ石川県の実在のスポットで数々の名シーンをリアルに視覚化しているから、原作ファンはきっと自然に心を揺らすはず。

原作を知らない人も、本作を観た後に漫画を手に取り、伊咲と丸太が生きた石川を訪ねてみたくなるに違いない。

『君は放課後インソムニア』絶賛公開中。

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。