90年代からインディーズV系シーンの最前線で活躍するボーカリスト、Hitomiさん。

ご本人自身、かなりのV系ファンだということで、黎明期から現在に至るまでのシーンについての分析や、Hitomiさんの考える「V系」について伺ってきました。

 

 

――Hitomiさんがバンド活動を始めたのが90年代半ばと伺っています。たとえばその時代と00年代初頭のシーン、そしていまのシーンって全然違うと思うんですよ。

Hitomi:ぜんぜん違いますね(笑)。俺はファンの目線だった時代をカウントすると、ほぼだいたいヴィジュアル系が始まったくらいの時代から今まで全部見てきてるんです。それこそまだ「ヴィジュアル系」って言葉が無かった頃から、LUNA SEAのインディーズ時代くらいから見ていますね。

それで、自分がバンドをやり始めた時はLa'cryma Christiがまだインディーズシーンで注目され始めて、MALICE MIZERもまだTETSUさんがボーカルだった頃…そのくらいの時代かな。

で、当時はまだ「黒服」の時代が終わってなかった。その頃は「ヴィジュアル系」よりも「黒服系」と呼ばれることが多かったと思うんです。メンバー募集を見ても「黒服系」と呼ばれていて。多分LUNA SEAの影響が強かったんだと思うんですが、原宿にも黒い人達が沢山いた時代(笑)。「CONFUSION」というお店が流行ってて…。

――ヴィジュアル系雑誌にそういう洋服の通販コーナーがありましたよね(笑)。

Hitomi:そうそう「LUNA SEAのメンバーが来ていた服が買える!」みたいな(笑)。俺が高校生の頃は、ああいうのがすごく流行っていた時代で。今みたいに「ステージ衣装を(衣装屋さんに)作ってもらう」って発想がなかったんだよね。みんな既成品を改造する程度。

俺も当時は全部既成品で揃えてたんで、メイクもヘアメイクさんとかいなくて、みんな自分でメイクしてたから、いまその時代の写真を見ると、頭とか化粧とかひっどいんですよ(笑)。

――昔は人気バンドならいざしらず、若手のバンドは大抵既成品を着てメイクも自分でやっていましたよね。駆け出しのバンドでも当たり前のようにへアメイクや特注の衣装を取り入れるようになったのはこの10年くらいの傾向だと感じています。

Hitomi:ここ最近の話ですよ。どうやったら人気が出るかって考えた時に、一般的には「売れてる人たちのマネ」をするのが一番てっとり早いじゃないですか。売れてる人たちのクオリティに近づけるにはどうしてもヘアメイクさんや衣装さんを付けないと…みたいな。

昔は周りがみんなが自前のメイクと衣装だったから、そういうのを全然凝らなかったんだけど、多分MALICE MIZERの登場がそこを変えたんだと思っています。あのメイクと衣装のクオリティの高さは、多分シーンの意識を大きく変えたんじゃないかな。

俺は当時自分のバンドをやりながら、MALICE MIZERのローディーをやってたんです。そこで自分たちがライブハウスで対バンしている人たちと、彼らには根本的な意識の差があって、そこに驚かされたということがあって。

衣装に対してはもちろんのこと、ステージ一本、ライブ一本に対しての作り込みや小物にもすごい凝っていて、ステージドリンクも普通のものじゃなくてワイングラスみたいなものを使っていたり。