――Moranは「キラキラ」でも「コテ」というわけでもないですよね。

Hitomi:あんまりそういうところに属した位置にいなくはないな。誰かのマネしてるみたいで、そういう風にカテゴライズされるのがあんまり好きじゃない(笑)。

流行りものに飛びつくみたいなのが一番やりたくないな。特に若い子たちにありがちなことなんだけど、その時にインディーズのヴィジュアル系で盛り上がってるバンドのマネをしたがる。「こういう曲をやったら人気が出る」「こういう見た目にしたら人気出るんじゃない」みたいな安易な発想に行き着くのがいやだなあって。

――人気のあるバンドマンの量産型みたいな人はいつの時代もいますよね。最初はマネをしててもやってるうちに本人の個性が出てくる人もいますけど。

Hitomi:もちろんタイミングさえ間違えなければいいと思うんですけど、「今」流行ってるバンドの真似を、「今」始めたら完成するのは一年後なので、それじゃ遅すぎる。それで、メンバーあつめて曲作って実際シーンに出てくるのが1年後、人気が出るのがまたその1年後…と考えると、その頃にはブームが終わってるじゃないですか。

それに、びっくりするような理由でメンバーが辞めちゃうとかって話も聞くんで。ルックスの良い面子を集めてやれば人気が出ると思って、始めたけど動員伸びなかったんで辞めます、みたいな。びっくりするなあ。ちょっとやって売れなかったら、すぐ辞めちゃうなんて。多いのかな最近そういうの。


――Hitomiさんは長い間ヴィジュアル系シーンにいらっしゃるわけですけど、「ヴィジュアル系」をやり続けている理由というのはありますか?

Hitomi:長いことバンドやってていると、周囲でも「ヴィジュアル系」を辞めていく人も結構いるんですよ。そういう人ってそこで結果を残せなかった人ばっかりだなって。

「俺はヴィジュアル系じゃない」と言って、他のところに行くんだけど、結局そっちでも上手く行かなくて、そのまま辞めちゃうってパターンはよく見るな。「この歌詞や音楽性なら他のジャンルに行った方がいい」みたいな人ならいいんですけど、「人気が出るところに行きたい」って思っている場合はだいたい失敗しますね。

「ヴィジュアル系でやれば人気出るだろう」とシーンにやってきて「やっぱりダメだった」と、流行ってるジャンルに行くというのも、さっき話していたことと一緒で流行りものを追いかけてても絶対に追いつけない。結局、流行りが巡ってくるまで、ずっと同じことやっている人のほうがまだ(流行の)波に乗れるっていうのはあるんじゃないかな。ヴィジュアル系をすごく長いこと見ていて、それだけはそう思います。

ヴィジュアル系がメジャーのシーンで流行る廃るっていうのもあると思うんです。そういうのも言われてるのを見てるけど…、別にあんまり…「廃れた!」とか「流行った!」とか、そこは何も気にならないな。

――音楽活動、バンド自体を辞めちゃう人もいるじゃないですか。ご自身はそういうことを考えたことはありませんでしたか。

Hitomi:全然ないですね。

――どうしてだと思います?

Hitomi:他にやりたいことがないからじゃないですか(笑)。

――(笑)。

Hitomi:他にやりたいことがあるとか、「このままじゃないけない」「このままじゃいられないな」と思うから辞めるわけじゃないですか。俺は少なくとも、まだシーンにとって自分の立ち位置がある間は辞めたくないな。ちゃんと迎えてくれる人たちがいて、シーンの中で自分の存在が許されてるなって思うんで。

それが全然感じられなくなってしまったら、それは辞めどきなのかもしれないけど。無いんですよね、今までやってきてて「俺はもうこのシーンじゃあ無理かもしれない」って思ったことが。逆に他のシーン行ったら売れるかもしれないって考えたこともないんで。自分が書く詩の世界観だったりとかも一番ヴィジュアル系に向いてるなって思うんで。