今年10月1日以降、同一返礼品の寄付金額が現時点より上昇するといったかたちで、ふるさと納税のお得度はだいぶ下がると予想されている

【連載・住まい選びとマネー論・2】 総務省が6月27日に「ふるさと納税の次期指定に向けた見直し」を発表すると、SNSでは、今年度分の「ふるさと納税」は9月30日までに駆け込みで寄付したほうがいいという声が目立つようになった。ふるさと納税に関し、制度本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われるよう、次回の指定対象期間(2023年10月~24年9月)の募集適正基準の改正を総務省が指示したからだ。

人気の返礼品「熟成肉」「精米」の地元産の扱いも厳格に

ふるさと納税は、「ふるさと納税サイト」などから所定の手続きに沿って地方自治体に寄付を行い、確定申告するか、ふるさとワンストップ特例の適用を受けることで、寄付金額に応じた返礼品がもらえるだけではなく、所得税のの還付や住民税からの控除が受けられる制度。ふるさと(過去の居住地)に限らず、どこでも好きな寄付先を選べる。

ご当地アニメ・コミックなどとコラボレーションしたグッズや、ふるさと納税限定のプレミアムな体験など、その地域・時期ならでは返礼品も多く、ふるさと納税は、制度創設の狙いの一つ、「地方創生」に大いに貢献していると考えられている。

今回の改正で、「ふるさと納税の募集に要する費用は、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とすること」と規定された。また、地場産品基準の改正として、「加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り返礼品として認める」という規定もあわせて追加されたため、原材料が他の都道府県産100%の熟成肉・精米を目玉の返礼品としている自治体は、その目玉品を取り下げざるを得ない状況となる。

ざっくりとまとめると、10月1日以降、同一返礼品の寄付金額が現時点より上昇するといったかたちで、ふるさと納税のお得度はだいぶ下がるとみられる。より本来の「寄付」に近い金額設定となり、豪華な返礼品目当てだった層は、「改悪」だと受け止め、ふるさと納税を取りやめるかもしれない。

こうした消費者の「ふるさと納税離れ」を防ぐため、10月1日以降、ふるさと納税サイトや、au PAYカードなど、ふるさと納税での利用促進に力を入れているキャッシュレス決済サービス事業者の一部は、いま以上にお得度の高いキャンペーン・プログラムを新たに展開すると記者は予想しているが、返礼品そのものの還元率を重視するなら、できれば今年9月末までに今年分を寄付することをおすすめしたい。

なお、ふるさと納税については、寄付したものの、確定申告せずに「得した気分」になっているだけの人が多いともいわれている(「ワンストップ特例制度」利用時は確定申告は不要)。ふるさと納税は寄付金控除を受けて初めて節税効果が得られる制度になっており、基本的に翌年春に確定申告を行う心づもりでいよう。

ちなみに、令和3年分確定申告から始まった、確定申告におけるふるさと納税(寄付金控除)の簡便化・簡素化に対応するふるさと納税サイトならば、事業者が発行する年間の寄付金額をまとめた「寄附金控除に関する証明書」を利用して申告手続きを簡素化できる。過去に自身や両親が住んでいた自治体など、寄付したい自治体が決まっている場合を除き、まず、利用するふるさと納税サイトを選び、次に寄付したい自治体を選び、最後に返礼品を選ぶと、より制度の趣旨に合った寄付が可能だ。

次回、連載第3回は、紙やプラスチック製のポイントカードよりお得なポイントカードアプリの例として「楽天ペイアプリ」を取り上げる。(BCN・嵯峨野 芙美)

■Profile

FPライター・sfmi

神奈川県生まれ。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。本連載では、街・人・お金に関する情報を中心に取り上げていきます。