公演ごとに実力派役者陣をそろえ、演出家・大河内直子が名戯曲の魅力を掘り起こすユニットunrato。10作目となる今回は、チェーホフの『三人姉妹』がいよいよ登場。長女のオーリガ役は、劇団四季を退団後も的確な演技力で活躍する保坂知寿、次女のマーシャ役は、元宝塚歌劇団トップスターで誠実な芝居と豊かな歌唱力に定評のある霧矢大夢。そして三女イリーナには、所属する文学座のほか外部公演や映像作品にも進出中の平体まひろが扮する。3人に意気込みを聞いた。

「このおふたりと共演と聞いて、まず安心感がありました」と話すのは保坂だ。
「何度も共演している霧矢さんは、考えていることが似ていて何でも話せる人。まひろちゃん(平体)とは初めてですが、ストレートプレイの環境に身を置く人なだけに、私にはない感覚を持っているのではと思って楽しみなんですよ」と微笑む。
霧矢は「私はまひろちゃんとも共演経験があって、おふたりとも頼もしい方だと知っているので、やっぱり安心感が(笑)。私の演じるマーシャは夫に不満があってトゲトゲしい人なのですが、そうでない部分をどう埋めていくかがチェーホフ戯曲を演じる際の“戦い”。なので、おふたりと戦いに挑めるのが心強いです」と語る。

2人の期待の言葉に、「尊敬するおふたりに付いていこうと必死です」と興奮気味の平体。それでも本作の魅力を聞かれると、考えながら「余白がたっぷりあるところでしょうか」と口にした。
「登場人物が好き勝手にしゃべって、たまに会話が成り立ってないようにも見えますが、それって私たちの日常でもよくあること。そういうグチャグチャした部分をいかようにも作れるのが、演じる側の面白さかなと思います」と話した。
「チェーホフって、若い頃と今とでは観ていても感じ方が違うんですよね。色々な受け取り方ができるから、多くの国で上演され続けているのかなって」と言う保坂。
続けて霧矢も「世界中の人たちが同じように閉塞感を感じている今、それでも人間ってたくましいよ、しぶといんだよということを教えてくれる作品。セリフがないところの芝居も大切に演じたいですね」と語った。

本作は、劇団四季が創立50周年の2003年にオープンした自由劇場で上演。
「(劇団四季の)創設者の浅利(慶太)さんは、チェーホフを上演するためにこの劇場を作ったんですって」と保坂が明かすと、「すごい巡り合わせ!」と驚く霧矢と平体。客席数約500の親密な空間で繰り広げられる『三人姉妹』。その本番が、今から楽しみだ。
公演は9月23日(土・祝)~9月30日(土)まで。

取材・文:藤野さくら