矢野顕子と清水ミチコは、すごく似ている。

うーん、ちょっと伝わりづらいか。「清水ミチコがやる矢野顕子のモノマネがすごく似ている」ではなく、もっと本質的に、表現者としてこのふたりはすごく似ていると思うのだ。

矢野顕子の弾き語りライブを見ると、自分は必ずといっていいほど笑ってしまう。なぜか。「すごすぎて」である。もちろん彼女は笑わせようとしてライブをやっているわけではないし、観る側も笑いたいと思ってライブを見ているわけではない。しかし目の前で鳴らされる音の迫力に、唖然とするとか感動するとか、そういう反応では感情が追いつかず、どうしようもなくなった果てに、「ははは、なんだこれ、すげーなー、はははは」と、笑うしかない感じになってしまうのである。

で、清水ミチコのライブはその反対。観る側は思いっきり笑いたくてライブに行くし、彼女も全力で観客を笑わせようとするし、実際大爆笑のステージであることは確かなのだが、ライブ中必ず、唖然としてしまう瞬間がある。戦慄、と言ってもいいかもしれない。ライブ中、ネタとかモノマネとかいう枠を超えて、彼女の「業」みたいなものがダダ漏れして、得体の知れない表現になってしまっている瞬間が必ずあるのだ。

さて清水ミチコの最新ライブDVD『LIVE! 清水ミチコのお楽しみ会 バッタもん』は、そんな彼女の魅力が全開、なんならちょっと開きすぎなくらい充実の内容である。
 

   

 

 


WOWOW
4500円
<セブンネットショッピングで購入>


いきなりタイムリーなネタから始まり(収録されたツアー自体は’10年に行われたものなのでまったくの偶然なのですが、ちょっとビックリした)、あの人からあんな人まで(本当はひとつひとつのネタにツッコミを入れたいところだけど、初見時の衝撃を邪魔したくないので説明できないのが辛い!)、本編2時間ギッシリ、めくるめくミッチャンワールドが繰り広げられる。TVのバラエティ番組での彼女しか知らない人は、そのアクと毒の強さに驚くことだろう。このツアーには自分も参加したのだが、会場でいちばん笑ったのは『BATTAMON講演会』というネタ。すっごくシンプルに言うと「これはひどい」(いい意味で!)というブラックなモノマネのオムニバスなのだが、実はDVD化にあたりいくつかのネタがカットされている(要は許諾が下りなかったネタがある)中、このネタがちゃんと収録されたことに驚いた。というか、正直よく許諾下りたなと思う。偉いよ、このネタを許した人たち! 爆笑必至です。


そんな中、本日12月23日、タワーレコード渋谷店にてDVD購入者を対象に開催されたスペシャルイベント『清水ミチコのHAPPY CHRISTMAS』に参加してきた。いやー久々のミッチャン、短かったけどよかったなあ。中でも井上陽水がDVD収録バージョンよりエスカレートしすぎでえらくひどいことになっていて(もちろんいい意味で!)腹抱えて笑ってしまった。クリスマスイブイブ、しかもめちゃめちゃ寒い中、ミッチャンのライブを観るために渋谷タワレコに集まる客と、それをひどい(あくまでいい意味で!)モノマネで迎え撃つ清水ミチコ、という図そのものがすでに笑えるシチュエーションで、なかなか味わい深いものがあったのだが、アンコールで歌われた矢野顕子の『ひとつだけ』を聴いて、やっぱり今回も呆然としてしまった。何回も観てるお馴染みのネタなのに、なぜ毎回こんなに本気で感動してしまうのか。ゲラゲラ笑っていたら最後に不意打ちを食らわされた感じ。うーん、さすがミッチャンとしか言いようがない。もちろんDVDの方にも、そんな鳥肌モノの瞬間がそこかしこに潜んでいるので、ぜひ隅々まで見尽くしてほしい。

上記イベントの一部はUstreamで配信され、期間限定でアーカイブも残っているようなので、DVD未見の方は試聴用としてお早めにチェックを。(※12月31日までの限定公開)

ちなみに本イベント参加者にはミッチャンからのクリスマスプレゼントが用意されていた。終演後に配られたのは、“ユーミソ”(notユーミン)の楽曲『青春のメディスン』の非売品シングルCD(中面にサイン入り。楽曲そのものはDVDにも収録されてます)。

   

 

 







 さすがに”ユーミソ”と印字するのは断念したとのことだが、このムダに(しつこいですが念のため、いい意味でっ!)高いクオリティに、またしてもミッチャンの深い「業」を感じてしまうのだった。ミッチャン、最高のクリスマスプレゼントをありがとう。