「解決できていないこと」を抱えた多くの人に響けば

稲垣吾郎 撮影/藤田亜弓

――純九郎の“欠落”であったり、たびたび見せる理解しがたい言動に関しては、どのように受け止めていますか?

稲垣 根本的な話として、俳優が役柄について100%理解できなくてもいいとは思っていて、実際にこの純九郎も理解できないキャラクターなんですよね(笑)。

理解しようとはするけど、神秘的な存在であってほしい部分もありますし、横山さんが描くキャラクターって一見、普通なんですけど、どこかおかしいんですよ(笑)。純九郎だけでなく、(回想で登場する)お父さんもお母さんもおかしいんだけど一見、普通なんです。

よくある人情ドラマでは全然なくて結構、不思議だなと思うし、その不思議さはとっておきたいなと思うんですよね。見る側にとっても「わかる!わかる!」だけじゃないし、僕は全然理解できていないし、それでいいかなと思っています。表現する上で、自分の中での整合性とか辻褄は合っていないといけないとは思いますけど、自分と役との距離があるから演じていて面白いです。

横山さんがおっしゃった「フタをしていた」という言葉はすごく印象的で、先ほど自分は「鈍感になってしまった」と言いましたけど、「とりあえずフタをする」ということに関して、器用になってしまっている部分があるんですよね。

家族のことについては先ほど「悩んだことがない」と言いましたけど、それ以外のことで、まだ執着しているものだったり、解決できていない出来事だったりは僕もあります。それが何かは言えませんけど(笑)。ちょこちょこ夢に出てきますよ。まだ解決できていないこと――それは人間関係のことですけど――、それは誰でもそういうことってあると思うし、いろんな人に響くといいですよね。