皿を割った罪をとがめられ失意の中で死んだ“お菊”の物語を、明治時代の劇作家・岡本綺堂が悲恋ものに仕立てた『番町皿屋敷』。この世界を、映像技術を用いた朗読劇シリーズで知られるアメツチ(プロデューサー:安藤匠郎、脚本・演出:山田英真)が再構築する──。回替わりで出演するキャストの中で、「怖くない怪談」のコンセプトに強く共感する小林愛香がインタビューに応じた。
皿を割るにいたったお菊の心情や、腰元の彼女と相思相愛の旗本・青山播磨との関係性を交えながら展開される本作。上演期間中、小林はお菊役として2回登板する。単なる怪談とはひと味異なる劇世界に、彼女は「昔の怪談ではあるけれど、現代の物語として受け止められる普遍性があると思います」とコメント。特に身分違いの恋に戸惑い播磨の愛情を試すお菊の女心、自身の真心を疑われお菊に刃を向ける播磨の悲しみに着目し、「現代人からすると突飛な行動に見えるかもしれませんが、奥底にある感情に心を寄せました」と語る。
では、共感したお菊をどのように造形するのか──。そう小林に問いかけると「健気な少女性を出そうと考えています」と即答した。「純真無垢で汚れがないからこそ、お菊は播磨の心を試したんじゃないかと思うんです。それで期待とは異なる結果になったとしても、彼女は受け入れる。そうしたお菊の一面を意識しながら朗読することで、播磨との切ないすれ違いをドラマチックにお見せできたら」と意気込んだ。
アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(2015年)において津島善子のCVを務めたことで知られる小林。過去には『選ばれなかった勇者の花嫁』(2020年)で朗読劇を経験している。主戦場の声優業や音楽活動と比べて、朗読劇にはどんな魅力があるのか──。そう尋ねると「一度幕が上がったらやり直しのきかない舞台では、役を演じるのではなく“生きる”に近い感覚を得られます」と述べる。そして「機会があれば台本を手放すお芝居にも挑戦して、自分の可能性を広げていきたいですね」と語った。
公演は10月6日(金)~9日(月・祝)、東京・渋谷区伝承ホールにて。回替わりのキャストスケジュールは以下の通り。チケット販売中。
※左から:お菊、青山播磨、十太夫、眞弓
6日(金)19:30=佐藤日向、橋本全一、堀江一眞、高柳明音
7日(土)13:00=小林愛香、阿部快征、橋本全一、島田愛野
7日(土)18:00=石塚朱莉、市川太一、野津山幸宏、小林愛香
8日(日)13:00=小林愛香、市川太一、野津山幸宏、和久井優
8日(日)18:00=和久井優、阿部快征、堀江一眞、和泉風花
9日(月・祝)13:00=高柳明音、橋本全一、堀江一眞、島田愛野
9日(月・祝)17:30=高柳明音、阿部快征、市川太一、石塚朱莉
取材・文:岡山朋代