撮影:飯野高拓・飯野哲郎

ダンスエンターテイメント集団「梅棒」のメンバーで、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンやMANKAI STAGE『A3!』シリーズで振付を担当する遠山晶司が脚本・演出・振付を務める企画シリーズ「遠山ドラマティア」の第2弾公演となる『C’est Promis(セ プロミ)』が10月5日(木)にこくみん共済 coopホール/スペース・ゼロ(東京・新宿)にて幕を開けた。

2021年に上演された第1弾『Fight For F』では、全編にわたってBUMP OF CHICKENの楽曲を使用して、セリフなしの肉体表現だけで物語を紡いだが、今回はセリフも活用し、楽曲も複数のアーティストの曲を使用。戦国時代と現代の2つの時代を舞台に、ある約束(※フランス語でpromis)を描く。

複数のアーティストの曲が使用されている中でも、最も多く使われているのがSEKAI NO OWARI。開演前の会場でもセカオワの曲が流れており、これから始まる、切なくもどこかワクワクするような冒険へと観客をいざなう。

物語は、福岡県筑後市に伝わる、背中に翼を持った“羽犬”の伝説をベースにしたオリジナルファンタジー。戦国時代のパートでは、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉に対し、いまなお抵抗を続ける九州の国人たちの戦いを描き、現代(令和5年)のパートでは、夫を亡くして故郷に戻ってきた妻とその娘の物語が、一大娯楽施設の建設に揺れる小さな町を舞台に展開する。

主演の鶴野輝一は、戦国時代では野盗集団・夜鷹衆の頭領である鷹彦を、現代では片桐翼を演じているが、主要登場人物の中で唯一、セリフのない役柄。激しい肉体表現だけで様々な感情を見事に表現している。

そして、ドラマ部分でひときわ強い存在感を放っているのがキャラメルボックスで活躍する原田樹里。戦国時代パートでは、夜鷹衆を従え「九州から覇をなす!」と宣言する男勝りの姫君・竜子を勝気に勇ましく、現代パートでは夫を亡くした哀しみを抱えながらも、娘のために笑顔を絶やさない涼子をキュートに演じており、魅力的な2人のヒロインを見事に演じ分けている。

そのほか、戦国時代では竜子を心から愛する夫の城井朝房、現代では涼子を優しく見守る智樹を演じる古谷大和、豊臣秀吉と再開発を掲げる県知事・豊田英樹をファンキーに演じる後藤健流ら、実力派の俳優陣が個性的な役柄で脇を固める。

戦国パートとド派手できらびやかな衣装や美術が目立つ現代パートのギャップも見どころ。歌とハイクオリティのダンス&アクション、豊かな表現で楽しませてくれる。

取材・文:黒豆直樹