ビビッドなネオンにあふれた街の中、クラブ「BREAK FREE」ではヒップホップを愛してやまない男たちが熱いパフォーマンスを繰り広げている。だがある時、政府が「ヒップホップ禁止条例」を制定。ヒップホップ弾圧を始めた。アース(木村慧人〈FANTASTICS〉)らも刑務所に収監され、ソーマ刑務官(阿部顕嵐)らの厳しい監督の下に置かれるが……。
break freeとは、「自由になる」こと。ヒップホップが大好きで、ヒップホップは害悪じゃないと全身全霊をもって訴えるアースたちの姿は、コウチ刑務官(高野渉聖)を皮切りに人々の心を動かしていく。ストーリーはシンプル、そして普遍的な、人が自由を求める心を描くものだ。アースやソーマをはじめキャラクターの配置も極めて王道と言える。
だが、そこが良いといえるのはアイディアに満ちた舞台装置・映像演出とかみ合ったパフォーマンスの多彩さ、そしてクオリティーの高さがあるから。キャストの肉体や小道具を活かしたダンスはもちろん、アクション、ヒューマンビートボックス、ダブルダッチなども駆使し、観客を飽きさせないステージングが繰り広げられる。プロフェッショナルな人々のスキルが詰まっていて、ゲネプロ前の会見で主演の木村や阿部、デューク役の松田昇大、クガ刑務長役の高橋駿一が語っていたように「全員すごい」としか言いようがない。
アース役で舞台初主演となった木村は、キラキラとしたまっすぐな眼差しが印象的。ヒップホップを愛し仲間たちと手を取り合う、正統派のヒーローとしての佇まいは“陽”の魅力にあふれた彼にぴったりだ。そんなアースと対の位置にある“陰”のソーマもまた、阿部の鋭く、しかも憂いを感じさせる持ち味を十二分に活かした役どころと言えるだろう。 ふたりが揃う場面は、大きな見せ場となっている。
松田のデューク、後藤大のホーイチ、高橋のクガらも役どころを活かして活躍。ラストの全員揃ってのパフォーマンスでは、刑務官役の面々も笑顔全開になっているのがほほ笑ましい。また、映像特別出演として荒牧慶彦、大野拓朗、唐橋充、spi、高野洸、戸田恵子、東山義久、廣野凌大、福澤侑、松田凌(以上、五十音順)も登場。各々の役回りとせりふで楽しませてくれることにもふれておきたい。
ポジティブなパワーにあふれた公演は、IHIステージアラウンド東京にて11月5日(日)まで。
取材・文:金井まゆみ