三吉彩花(ヘアメイク:Kyoko /スタイリスト:岡本純子)(C)エンタメOVO

 橘蘭は、将来を期待された女性ボクサー。ある日、妹が犯罪組織に捕らわれたことを知った彼女は、鍛え上げた自らの拳と肉体を武器に、裏社会に足を踏み入れていく…。11月2日からPrime Videoで配信スタートとなる『ナックルガール』は、韓国の人気WEB漫画を原作に、韓国と日本の制作陣と日本の人気俳優がタッグを組んだ日韓共同作品のアクションエンターテインメントだ。主人公・橘蘭を演じるのは、『犬鳴村』(19)、「今際の国のアリス」(20、22)などに出演するほか、モデルとして世界で活躍する三吉彩花。本格アクションに挑戦した末、「いろんな国のチームと仕事をしてみたい」と、新たな意欲が芽生えた撮影の舞台裏について聞いた。

-迫力満点の三吉さんのアクションに圧倒されましたが、肉体改造のトレーニングはどのように行ったのでしょうか。

 韓国のチームと合同のトレーニングに加え、私は個別にボクシングのトレーニングもあったので、合宿のような状態で毎日5~6時間、5カ月ぐらいトレーニングが続きました。元々、高校を卒業した頃からトレーニングはしていたんですけど、体型維持が目的だったので、アクションを想定した本格的なものは初めてでした。だから、最初はあっという間にスタミナ切れしてしまって。そのため、それからは食事の量も増やし、合間に玄米のおにぎりで糖質補給するようにして、見た目の説得力を維持しつつ、スタミナもつけていくようにしました。

-それはかなりハードですね。

 どこがベストな状態かわからず、アクション監督やトレーナーの方と相談しながらだったので、まるで見えないゴールを探しているような感じでした。ただ、他の皆さんも一緒だったので、追い込むときとリラックスする休憩時間のメリハリがあったのは助かりました。おかげで、体に過度な負担がかかることもなかったですし。

-その成果は、劇中で存分に発揮されていますが、実際にアクションに挑戦してみた感想は?

 トレーニングを積んだとはいえ、実際にやるのはやっぱり大変でした。ただその分、安全第一でいろんなことを実践し、とことんリアリティーを追求していくチームだったので、見応えのあるアクションシーンが出来上がったと思います。精神的にもすごく鍛えられましたし、自分でもよくこんなにスタミナをつけられたなと驚いたくらいで。

-今までの三吉さんのイメージがガラッと変わる作品で、新たな代表作になりそうですね。

 そういっていただけると、うれしいです。ただ、重要なのはそれよりも、「作品のカラーやメッセージ性がきちんと伝わったか」だと思うんです。そういう意味で今回は、私が主演ということになっていますが、ハードなトレーニングを乗り越えた皆さんがそれぞれ主役だと思いますし、それこそ日韓両国の皆さんの力があって出来上がった作品です。だから、まずは自分のことよりも、「爽快なアクションエンターテインメントが出来上がりました」ということを、自信を持ってお伝えしていきたいです。

-作品に対する強い思いが伝わってきますが、最初にオファーを受けたとき、どんな点に魅力を感じたのでしょうか。

 元々、私は韓国に何度も旅行に行っていたくらい、韓国のエンタメが大好きだったんです。スケールの大きさやリアリティー、アクションなど、韓国にはあらゆる面で優れたエンタメ作品がたくさんあります。それがどんなふうに作られているのか興味もあったので、韓国のスタッフと一緒にクリエーティブな作業ができるこの作品は、それを体験するいい機会だなと。だから、お話を頂いたときは即決でした。

-そうすると、韓国のスタッフの仕事ぶりから刺激を受けた部分も?

 今まで、モデルの仕事で韓国はもちろん、ヨーロッパなどさまざまな国にも行かせていただきましたが、今回はそれとはまた違ったパフォーマンスを発揮する機会になったので、すごく刺激的でした。普通のお芝居は監督が演出し、アクションシーンはアクション監督が担当、というように役割が分かれているのも初めての経験でしたし。おかげで、もっといろんな国のクリエーティブチームと一緒に仕事をしてみたいという気持ちも湧いてきました。

-逆に海外との合作を経験して、改めて気付いたことはありますか。

 コミュニケーションの大切さです。ものを作っていく上では、たった一つのシーンであっても、キャスト同士や監督、すべてのスタッフが同じ方向を向いている必要があります。でも、いろんな文化や考え方を持つ人たちと仕事をすると、きちんと話をしないと分からないことがたくさんあるんです。例えば今回、カメラマンの方は日本人でしたが、普段から海外で活動されていることもあってか、こちらが当たり前だと思って話していることが、上手に伝わらないこともあって。その上、海外との共同作品は「通訳」というワンクッションが入るだけで、遠回りしたり、別の意味で捉えられたりすることがすごく多いんです。だから今回、改めてコミュニケーションの大切さに気付かされました。

-映画製作に限らず、人と仕事をしていく上では大切なことですね。

 ただ同時に、皆さんと密にコミュニケーションを取れたことは、いい経験になりました。いろんな価値観を共有し合えることが面白く、すごく刺激を受けましたから。ときにはぶつかることもありましたが、それはあくまでも作品をより良くしようとする意見交換の一環でしたし。それが今回の一番の収穫だったといっても過言ではないくらいです。

-海外での活動については、どんな思いを持っていますか。

 私は「自由でいたい」、「人と違うことを楽しみたい」というタイプなので、これからもいろんなことに挑戦していきたいです。ただそれは、「ハリウッドに進出したい」とか「海外でトップを目指したい」ということよりも、「知らない世界を見てみたい」という好奇心が原動力になっています。だから、アジアでもヨーロッパでもアメリカでも、関われるなら、いろんな方たちと仕事をしてみたいです。そういう意味では、最近はこの作品のようにボーダーレスに発信(本作は世界240以上の国と地域で配信)することもできますし、コロナ禍も一段落してまた海外に行けるようになったので、ありがたいですね。

-この作品は、そういう三吉さんの新たな一歩になりそうですね。

 そうですね。だから、皆さんの反響がすごく楽しみです。

(取材・文・写真/井上健一)

配信開始日:11月2日(木)よりPrime Videoにて世界独占配信