言われたわけではないのにアッパーな芝居になっていた

Photo●かくたみほ
拡大画像表示
   
 染谷も二階堂も園作品への出演は今回が初めて。話はまずその運命的な出会いから始まった。
染谷「園さんの映画が好きだったし、出演した役者さんの話を聞いて興味があったので、一度でいいから園さんと一緒に仕事ができたらいいなと思っていたんです。そしたら、『冷たい熱帯魚』の試写会に行った帰りに事務所から“園さんのオーディションがある”って電話がかかってきて。まあ、緊張しましたね(笑)」
二階堂「私は古谷さんのマンガが好きだったから、『ヒミズ』って聞いたときにまず“あ!”ってなりました。その次に園監督が撮るって知って、面白そうだなと思ったんですよ」
 染谷が扮した住田は、自分勝手に生きる両親によって心に深い闇を抱え、ある事件がきっかけでその抑圧したものを爆発させるように無軌道な行動に出る。映画は二階堂の演じた茶沢がそんな彼をひたむきに愛し、救おうとする姿を映し出していく。
染谷「脚本を読んで若気の至りだなと思って。その若さって人間誰もが持っているものだと思うけど、“そんなに頑張らなくていいんだよ、もっと気楽でいいじゃん”って住田に言ってやりたくなりました(笑)」
二階堂「茶沢はウザいですよ。自分でもそう思いました(笑)。現場に入るまでは、茶沢に身体を貸して、私が私じゃなくなっちゃうんじゃないかっていう不安もあったんです。でも、入ったら監督に丸裸にされていってる気分で、守りの体勢でいた自分を捨てることができた。自分を追い込んで、パッと解放させる絶妙な方法が分かったし、茶沢を通して強くなりましたね」
染谷「僕は無理するのだけはやめようと思っていた。無理してテンションを上げると嘘っぽくなるし、嘘はつきたくなかったから。でも、無理しなくてもあそこまで弾けられたのは監督や共演したみんなのおかげ。現場の環境も素晴らしかったしね」
二階堂「私も現場が楽しかった」
染谷「見た目は戦場だけどね」
二階堂「でも、現場でどんどん役と同化していく感覚もあって」
染谷「だから最初は俺、すごく意地悪だったよね(笑)」
二階堂「すっごい冷ややかな目で見てくるし、怖かった」
染谷「前に(ドラマ『熱海の捜査官』〈'10年〉で)1回共演していて、そのときは普通に映画や音楽の他愛のない話をしていたのにね(笑)」
二階堂「私もすごい挙動不審で(笑)。でも、撮影していくにつれて、お互い役者としても人間としても出し合えたというか。私は染谷くんの演じる住田がすごく必要だったし、染谷くんじゃなきゃダメだと思ってた」
染谷「それはある。ガンガン叩かれれば叩かれるほど腹が立って、こっちも本気で叩いたからね(笑)」
二階堂「そうすると私もちょっと楽しくなって、わざとイラッとすることをやったりして(笑)」
 そんな自然な演技を、園監督はどうやって引き出したのだろうか。