約100種類のメニューがズラリ、リーズナブルな中区「天龍菜館」
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次は、中華街から少し外れた、広東家庭料理のお店「天龍菜館」。JR石川町駅から徒歩約4分、車庫を改装したという狭い同店の壁には、薬膳スープをはじめとした手書きのメニューが、隙間なく並べられている。
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店主の茹(ヨウ)さんは、高齢のため引退した前店主から、1996(平成8)年にこの店を引き継いだという。ちなみに香港出身なので、日本語はカタコト。中にいた常連さんに通訳してもらいながら、取材を続けた。
同店が提供しているメニューは約100種。得意なメニューは薬膳スープ各種、オススメは「パリ皮チキンの姿揚」「ソフトシェルクラブのピリ辛唐揚」など。
さて、そんな同店では、塩味のサンマーメンがいただけて、しかも500円とリーズナブル。しかも、もやし、ニラ、タマネギに豚肉などがてんこ盛りだ。ワンコインで食べられる店はほかにもあるが、この値段でこのボリュームは、なかなかお目にかかれないだろう。
塩味の理由について茹さんは、「広東はもともと塩味、本場の味を横浜でも味わってほしかったから」と話す。もともとスープは得意なだけに、普通の塩ラーメンとひと味違った独特の風味が、湯気に持ち上げられて鼻腔(びこう)をくすぐる。
また、「ナカの人(中華街の店主の意味)もよく通ってくるみたいですよ」と常連さん。立ち寄りがたい雰囲気にめげず、勇気を持って踏み込んでみよう。その実力は、折り紙付きのようだ。また、店舗入口で販売している、マーラーカオ(中華風蒸しパン・500円)もひそかな人気。こちらも、1人では食べきれないほどの大きさだ。
本場台湾の客家(はっか)料理でおもてなし、鶴見区「桃園」
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最後は、グルメ系のサイトなどで評価が高い、台湾家庭料理の店を訪ねてみよう。京浜急行生麦駅から徒歩約11分、国道1号線岸谷交差点近くにある、1996(平成8年)創業の「桃園」。店名の「桃園」とは、台湾国際空港のある県の名前だ。
化学調味料は極力使わない、やさしい味をモットーとしている店主の平井さんは台湾出身。はじめて来日したときは、ほとんど料理の経験がなかったそうだが、日本にある食材の豊かさに感動。帰国後、ぜひ郷土の客家(少数民族)料理を再現したいと親戚などからレシピを学び、再来日を果たした。
「国籍は取得したけど、日本には身寄りがいないでしょ。だから、お客さんが私の家族なの。家族を相手にお店を休むわけにはいかないじゃない、だから、気付いたら18年間も年中無休でやっていたわ」と平井さん。地元の方にも「お母さん」と慕われ、母の日には、開店前の店頭にカーネーションが並べられることも。
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野菜たっぷりのサンマーメン(840円)を注文した。このサンマーメンは、しょうゆベースでコクのあるスープが特徴で、焦がしたニンニクが全体に香ばしさを添えている。
具は、モヤシ、ニラ、ニンジン、シイタケと豚肉。これを目当てに、毎日訪れる常連客もいるそうだ。
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そこへ、「よろしかったら食べてみます?」と何やら見慣れぬ食材が。
台湾料理、「マコモダケ(タケノコの一種)の天ぷら」(750円)をいただいた。
ウドのような食感なのに、みずみずしいタケノコの風味が香り、ビールが進みそうな逸品。同店では、約70種類ある本場の台湾料理が1000円未満で楽しめる。現地に行った観光客が、あのおいしさを国内でも味わえないかと、わざわざ検束して訪れるケースも多いらしい。
また、「料理は、出して終わりじゃないの。もし余っていたら、何がいけなかったんだろうと反省して、新しく工夫するようにしています」とのこと。ちなみにサンマーメンは、過去2回ほど改良しているという。どうやら、平井さんの愛情は、衰えることを知らないようだ。