世界中から作曲委嘱が引きも切らない人気の現代作曲家・藤倉大。この秋東京で、彼に関連するコンサートが3本、続けざまに催される。英国から一時帰国中の藤倉本人が出席して記者懇談会があり、概要が発表された。

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1977年生まれの藤倉大は、中学卒業後に英国に留学して作曲を学んだ。彼の音楽は、けっして耳当たりのよい柔和な響きの作風ではない。いわゆる現代音楽でありながら、多くの演奏家がその作品に魅せられ、聴衆の絶大な支持を得ている現実こそが、その魅力を示す凄みだと言えるだろう。

一連のコンサートは、まず9月24日(月・祝)、昨年に続いて行なわれる東京芸術劇場の「ボンクリ・フェス2018」から。アーティスティック・ディレクターを藤倉が務める。「ボンクリ」とは「ボーン・クリエイティヴ(Born Creative)」の略。「人間は生まれながらにクリエイティヴだ」というコンセプトのもと、「赤ちゃんからシニアまで誰もが、朝から晩まで、新しい音楽を面白く聴ける」(藤倉)という複数のイベントによる1DAYフェスティバルだ。フェス全体は、坂本龍一や大友良英の作品などが演奏される17時半開演の「スペシャル・コンサート」と、その出演者たちが、子供たちにもわかりやすく説明を交えながら演奏する複数のワークショップ・コンサートを中心とする「デイタイム・プログラム」で構成される。「いろんな聴き方ができることをやりたくて、好きな奏者に声をかけたら、みんな乗り気で来てくれちゃった(笑)」と藤倉が言うように、ワークショップ部分は昨年から大幅に拡大された。細部については当日決まる部分もあり、藤倉は「クラシックのコンサートって、きっちり決まっていることが多いけど、わざとぼんやり、やわらかく作ってます」と、フレキシブルな自然体を強調した。

続く10月20日(土)の「藤倉大個展」(Hakuju Hall)と、10月31日(水)の藤倉作曲のオペラ《ソラリス》の演奏会形式日本初演(東京芸術劇場)では藤倉作品をたっぷり聴ける。前者は委嘱作品初演を含む室内楽作品の個展。ホールの開館15周年記念公演でもある。一方の《ソラリス》は、2015年にパリで初演された藤倉の初オペラ。タルコフスキーによる映画化でも知られる、SF作家スタニスワフ・レムの小説『ソラリス』が原作だ。「いつかオペラの依頼が来たら『ソラリス』と決めていた」という藤倉だが、原作のSFとしての興味からではなく、すべての登場人物の内面の感情が描かれるこの文学作品を表現するのに、オペラこそが最適と考えたのだという。話題のオペラがいよいよ日本でヴェールを脱ぐ!

藤倉は自身のホームページ上でスコアを公開しているから、閲覧してみると(たとえ眺めるだけでも)作曲家と作品への興味は、さらに掻き立てられるはず。今年の秋は藤倉大に注目。

チケットの一般発売に先がけて、プリセールを実施。受付は4月21日(土)昼12時から27日(金)午後11時59分まで。

取材・文:宮本明