「息子の同級生、Aちゃんの話です。中学受験をすると決めた段階から『絶対に〇〇学園に』という目標を父親が決定していました。
しっかりしていて優秀な子だったので、私も最初はなんの違和感なく話を聞いていたのですが、模試の回数を重ねて志望校と子どもの偏差値との距離が数字として見えてくると、Aちゃんの家庭がやっていることに疑問を抱くようになりました。
思ったよりも志望校のレベルとAちゃんの偏差値が乖離していて、優秀だったはずのAちゃんでも到底及ばないのでは? と周囲から見ているとわかるんですけど、肝心のAちゃんの父親はそれを認めようとしている気配がないのですよね。
タチが悪いのが、父親の見栄からそのような行動に出ているという雰囲気はなく、『Aが幸せに生きるには最低でもこのライン。子どもは受験前日まで伸びるはずだから受かるに決まっている』というようなことを本気で思っている様子だったこと。
もちろん、塾からのアドバイスも無視して、持ち偏差値よりもずっと上の志望校、それと同じ偏差値周辺の第二、第三志望校ばかり受験させていました。安全圏の学校に関しては『どうせ受かっても行かないから』と受験せず……。
Aちゃん自身はとても不安そうにしていましたね。
結局、受験した中学校の全て不合格の“全落ち”になってしまい、Aちゃんは地元の公立中学校に通っています。
Aちゃんの父親は『中学に入って何も言うことを聞いてくれなくなった』と関係の悪化を嘆いていますが、原因がどこにあるのか全くわかっていない様子です」(医療事務/40歳)
周囲から見ると「子どもの不安を無視して善意を押し付け、結果誰にとっても不本意な結果を招いた」ことが、子どもの反抗の原因になっているのでは? と感じますが、親は“子どもを思っての行動しかしていない”ため根本的な原因に気がつけないのですね。
Aちゃんの父親は現在も「思春期だから仕方がない」「周囲の友達が良くない」と、自分たち以外に原因を見つけようとしているそう。一方、母親のほうは原因はなんとなく察していて、歯止めがかけられなかったことを後悔しているそうです。
子どもの未来にとって良いことをしようとしたり、ポジティブに未来を想像したりすることは必要なことですが、いき過ぎると子どもの気持ちや意見を無視してしまうことにもつながります。
特に、中学受験の結果は子どもにとっても非常にセンシティブなもの。軌道修正を許さないような独善的な考えを押し付けていないか日々顧みることが大事です。