女性が気がついたこと
その朱美さんが「気がついたのですが」と教えてくれたことがあります。
「ふたりとあのまま続けていても、いずれどちらかとは終わるというか、ひとりに絞らないといけないときが来たのですよね。
そのとき、もしかしたら私はどっちも選ばないのでは、と思いました」
驚いて理由を尋ねると、
「ひとりになってから、彼氏のことを思い出してもそこまでつらくならないというか、正直に言えば本当に好きではなかったのだと思います。
もう一人の彼も、浮気相手だから関係を持っていたのであって、この人を本命にするかって言われたら違うなって。
結局、最後も今のようにひとりになったのかもしれません」
淡々と話す口調は、「自分に見切りをつけた」男性たちを冷めた目で見ていることが伝わりました。
その実感こそ朱美さんの正解であり、二股のようなおかしな関係で複数の人とつながっていても、「人を愛する自分」の幸せは手にできません。
愛されてそれにあぐらをかいていても、その状態で別の人を好きになっても、「愛する」がそもそも能動的に人を求める在り方なら必ずどこかで行き詰まります。
最終的にどちらも選ばずひとりになる、それが異常な関係の終着であって、「おかしいのだ」ということに、朱美さんは気づいていました。
恋愛自体は複数の人が絡んでもOKとなっても、交際に関しては一対一で向き合うのがまっすぐな愛情を向けられる在り方で、どちらの男性からも「切られた」朱美さんは、自分もまたどちらの男性も愛していなかったことを、改めて知りました。
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人を好きになりお付き合いすることは、一対一だからこそ「自分だけ」を信じて互いに愛情を向けあえることに替えのきかない喜びがあります。
二股のように愛情を「分散する」のは本来できないのが当たり前で、嘘や矛盾が避けられないためにいずれ終わりを迎えます。
「人を愛する」姿勢は、ひとりの人間にしっかりと集中できる強さがいるのだと、忘れてはいけません。