糸川耀士郎(左)と山崎大輝 (C)エンタメOVO

 市村正親×大竹しのぶ×演出・宮本亞門で作り上げる、ミュージカル「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」が3月9日から上演される。本作は、18世紀にロンドンに実在したという理髪師をモデルとする痛快にして悲しい復讐譚。2007年に市村と大竹は本作で舞台初共演を果たして以降、再演を重ねており、今回5度目の上演となる。アンソニー役をWキャストで演じる山崎大輝と糸川耀士郎に役への思いや公演への意気込みを聞いた。

-本作への出演が決まった時の心境を教えてください。

山崎 アンソニー役はこれまで錚々(そうそう)たる俳優の皆さんが演じられてきた役なので、「あの方たちが演じられてきた役を、今度は僕がやらせていただけるのか」というのが最初の感想です。ホラー的な要素のある作品ですが、生きることに精いっぱいで必死だった時代の人たちを大切に演じなければいけないと思いましたし、自分の中でまた一つギアを上げて頑張っていきたいと考えたことを覚えています。

糸川 出演できることが決まった時は本当にうれしかったですし、また一つ自分が成長できるなと感じました。実際に、歌稽古でも違う技術で歌ってみようというチャレンジもできていますし、自分自身でも成長を実感できています。

-そうすると、二人にとっては、挑戦という意味もある作品になりそうですね。

山崎 そうですね。今回は特に、稽古場でかける恥はいっぱいかこうと思っています。今まで苦手だと思っていたところや避けてきたことにも真っ向から向き合って作品に挑んでみようと思います。それから、役の作り方や舞台の立ち方も、今までやっていたやり方とは別のアプローチに積極的にチャレンジしようという気持ちがあります。市村さんやしのぶさんをはじめとしたすてきなキャストの皆さんと一緒にこうしたチャレンジができるというのが、すごく楽しいです。

糸川 僕も、チャレンジだという気持ちもあります。自分なりにここまでいろいろな現場で培ってきたマニュアルのようなものができつつあるので、それがどこまで通用するのか試したいという気持ちもありますし、絶対に通用させてやるという思いもあります。

-今回、Wキャストで演じるアンソニーについては、今、どのようにとらえていて、どんなところをポイントに演じたいと考えていますか。

山崎 最初の印象は、若くてピュアで、純粋な心を持っていて、夢に溢れた青年だなと感じました。その後、ジョアンナとの出会いを経て、アンソニーがどう変わっていくのかが見どころだと思います。きっと演じる役者によってアンソニーの変化の仕方は変わっていくのかなとも思うので、そこは見せていきたいところだと思います。それから、アンソニーのジョアンナに対するいちずな思いは、ある意味では病的でもあるのかなと。でも、そのゆがんでいる愛がすごく美しいと僕は思いました。一つボタンを掛け違えたら成立しなくなってしまうようなはかなさを感じるので、丁寧にアンソニーを作っていきたいと思っています。

糸川 僕も最初は、純粋で真っすぐで、少し壊れやすくて脆さも持った青年だなと思いましたし、それをイメージして台本を読んだのですが、それだと面白くない。なので、この「スウィーニー・トッド」の中でアンソニーの役割をもっと色濃くしていきたいと考えています。ジョアンナに対する気持ちは、純粋で真っすぐですが、その中にも強さがあって、芯が通っている。そうした強さをもっと突き詰めていきたいです。僕は、見た目は決して“強い男”というイメージではないですが、それでも曲がったことは許さないという熱さや内面の強さを出していけたらいいなと思います。

-スウィーニー・トッド役の市村さん、ミセス・ラヴェット役の大竹さんとの共演で楽しみにしていることやお二人の印象を教えてください。山崎さんは「ピアフ」でも大竹さんとご一緒されていますね。

山崎 はい。「ピアフ」で得たものはすごく大きかったです。その時から、またしのぶさんとぜひご一緒させていただきたいと思っていましたし、そうなれるように頑張りますともお伝えしていたので、こんなにも早くまたご一緒できることが本当にうれしいです。この2年間での成長を見せたいと思いますし、まだまだ未熟なところもあるので、この作品でまたしのぶさんからいろいろなものを教えていただき、吸収したいと思っています。

 市村さんとは初めてご一緒させていただきますが、学ぶことばかりです。私生活でどう生きて、物事をどうとらえてきたのかが芝居ににじみ出る方なんだなとお芝居を通じて教えていただいています。これからのお稽古の中でもきっとお芝居で通じ合う瞬間を感じられると思うので、それを早く味わいたいです。

糸川 僕はお二方とも初めましてなのですが、一緒にご飯に行けるくらい仲良くなりたいと思っています。僕自身、歌だけでなくお芝居ももっともっと深く突き詰めたいと思っているので、まさにお二人のような俳優に憧れます。たくさんお話を聞かせていただきたいです。ミュージカルに向き合うときはどうされているのか。逆にストレートプレイでお芝居をされるときはどうされているのか。機会があれば、ぜひご飯に行かせていただいて、そうしたお話ができたらうれしいです。

-衝撃的なストーリー展開がこの作品の魅力の一つですが、それにちなんで、最近起きた衝撃的な出来事を教えてください。

山崎 冬で乾燥していたのでリップクリームを持ち歩いているのですが、この間、忘れてしまった日があって、それで急きょ、コンビニでなるべく保湿ができるものにしようとちょっといいものを買ったんです。そうしたら、それが色付きだったんですよ。でも、塗ってみたら、いい感じだったので、その日はそれを使ってポケットに入れたまま洗濯をしてしまったんです。そうしたら、一緒に洗った色々な服に口紅のような赤がついてしまって。靴下にも至る所に赤い色が点々とついていて(笑)。こんなに付くものなのって、衝撃でした。

糸川 リップつながりで言うと、僕が使っていたリップと普段、大輝が使っていたリップが全く一緒だった(笑)。

山崎 そうそう! 一緒のリップ使ってるよねって話した(笑)。

糸川 運命を感じましたね。

-最後に改めて、公演への意気込みをお願いします。

糸川 稽古をしていても日々、この作品の面白さを痛感しています。この錚々(そうそう)たるキャストの方々と一緒にエンタメとして面白いものを作れる幸せをひしひしと感じています。僕たちがたくさん悩んで作り上げたアンソニーが、本番ではどう完成されているのか楽しみに待っていただけたらうれしいです。

山崎 この「スウィーニー・トッド」は、8年ぶり、5回目の上演になります。(演出の宮本)亞門さんが「新作を作るようなつもりで臨む」とおっしゃっていましたが、稽古では、これまで大事に作ってきたものをぶち壊して新たに作っていることをすごく感じています。僕も新しい「スウィーニー・トッド」を作る一員になれていることをうれしく思いながらも、楽しみながら作らせていただいています。前回、ご覧になった方は今回どのように進化したのか。そして、初めてご覧になる方は、世界中でこれほど再演を重ねている作品の魅力を実感しにきていただけたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

ミュージカル「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」は3月9日~30日に都内・東京建物Brillia HALLほか、宮城、川越、大阪で上演。

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ミュージカル「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」[/caption]

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