――それでは、今回の劇場版ではどういったことを目指そうとしたんですか?

「テレビ版では、荒木剛太が金造(菊池風磨)や草薙(ジェシー)を中心とした不良の生徒たちとどう向き合うのか? をまずきちんと描こうと思ったんです。

それって、教師と生徒との関係性なんですね。しかも、荒木剛太はその第1話の時点で、つらい過去は背負っているけど、基本的には揺るがない、生徒に心でぶつかるという熱い信念を持っていた。それによって生徒たちの心を開いていく展開だったので、荒木剛太自身が大きく挫折をするということはなかったんです。

それにテレビ版で“対生徒”のドラマを描ききれたという手応えがあったので、次は生徒との物語ではなく、荒木剛太の物語をきちんと描きたいなと思って。荒木剛太にまず大きな挫折を味わわせて、彼がそこからどうやって再び這い上がるのか? という設定を考えた。

剛太が教師になるきっかけというか、ルーツになる高校時代の恩師の羅門(遠藤憲一)を登場させ、羅門との過去と現在の関係性を描けば、剛太の試練と成長を見せることができるかなと思ったんです」

――映画ならではの大きいスクリーンで見せるということで何か意識されたことはありますか?

「テレビ版はもともと若い女性に人気のある深夜のドラマ枠で放送されたんですけど、オンエアーが始まったら、意外と三十代以上の男性の方々が熱狂的に観てくれて。

藤沢とおるさんの原作のファンや『GTO』世代はもちろんですけど、作り手の僕と同じような、昭和のヒーローものを観てきた男性からすごく支持されているという話を聞いたので、劇場版は大人の男性にも興味を持ってもらえるような物語にしたいなと思ったんです。

それで羅門という、剛太よりもひとつ上の世代の教師を登場させて、さまざまな苦渋を味わってきた彼と剛太が教育論を戦わせながら、いまの学校教育、学校制度に必要なものは何なのか? という、より深いところに入っていくような物語にしたんです。でも、それは『仮面ティーチャー』の“ティーチャー”という単語が象徴する熱血学園ドラマの側面で、“仮面”に象徴されるヒーローものの側面ではやっぱりアクションをきちんと見せたいと思いました。

テレビ版は基本的に“対生徒”でしたから、生徒に暴力をふるわないポリシーを持った荒木剛太でアクションを描くのには限界があったんですね。でも、劇場版では生徒たちに害を及ぼす大人たちに対して力で立ち向かうことができたので、アクションをより大きく見せるような作りにしたところがあります」

――劇場版では、特にクライマックスのアクションが大きな見どころですね。

「実はあのシーンはクランクインして4日目ぐらいに撮影したんですけど、遠藤憲一さんはあそこから現場入りして(笑)。あの役で初めて登場し、いきなりクライマックスの撮影だったんですよ」

――でも、遠藤さんは藤ヶ谷さんのことや荒木剛太のことをあまり知らないあの段階でアクションシーンに突入できて逆によかったって言われていました。

「遠藤さんはどのシーンも全開で演じてくれるから、現場が緊張するのと同時に、藤ヶ谷くんだけじゃなく、みんなの気合も入って、いいシーンになりましたよね」

――藤ヶ谷さんも遠藤さんに自分の意見をぶつけて、相談しながら演じたと言われていました。

「そうですね。遠藤さん自身が“このセリフをこういうふうに言い変えたいんだ”とか“こういうふうに動いてもいい?”ってひとつひとつ確認してくれるんですね。自分とは3度目のお仕事で信頼関係もできていたから、遠藤さんがいろいろ相談しに来てくれたし、羅門像を決してただの“悪”ではなく、きちんと強さと弱さを兼ね備えた、血の通ったキャラクターにしてくれましたね」