テレビ版に続いて、大ヒット公開中の『劇場版 仮面ティーチャー』のメガホンもとった守屋健太郎監督に直撃インタビュー! テレビドラマからグレードアップした劇場版に込めた守屋監督の想いと狙い、監督だけが知る仮面ティーチャー=荒木剛太こと藤ヶ谷太輔の魅力とスゴさとは? さらに金造役の菊池風磨、草薙役のジェシーについてもたっぷり語ってもらった。
遠藤憲一の迫力にも負けない
藤ヶ谷太輔に芝居の力に圧倒された
――監督はいつかヒーロー・アクションを撮りたいと思っていたんですか?
「最初の『仮面ライダー』のシリーズとか、70年代のヒーローものを小学生のころに経験しているので、憧れはずっと持っていました。でも、まさか自分が監督をするとは思ってなかったですね(笑)」
――それでは、最初にドラマの『仮面ティーチャー』の監督の話がきたときはどう思いました?
「最近のヒーローものって“正義とは何か?”ということをきちんと言えなくなっているような気がしていたんです。
いまの世界情勢と同じで、片方から見たら“正義”かもしれないけど、もう片方から見ると“悪”だったりして、世の中の問題が単純に“善悪論”で片づかない時代になりましたからね。それこそ、ヒーローの存在が非常に危うくなってきている。そんな現代で、ヒーローをどう描いたらいいのか? そこが自分の中では大きなテーマだと思いました」
――『仮面ティーチャー』は生徒と“心で向き合うのか?”、それとも“力で向き合うのか?”というまさに現代ならではの設定が新しくて面白いところだと思います。監督も“これだ!”という感触があったのでしょうか?
「そうですね。藤沢とおるさんの原作は連載当初から一読者として読んでいたので、日本テレビの植野浩之プロデューサーから“『仮面ティーチャー』を映像化しませんか?”という話をいただいたときは、二つ返事で“ぜひやらせてください”って言いました。
でも、仮面ティーチャーが何と戦い、何を守るのか? ということをきちんと考えておかないと、いまの多くのヒーローものと同じように彼の使命が何なのかが見えづらい曖昧な存在になってしまうと思ったので、そこからはすごく悩みましたね」
――悩んだ結果、どういう結論に至ったのでしょうか?
「ヒーロー像をもう一度考えたときに、僕が観てきた、自分の信念に向かって突き進んでいく昭和の熱血ヒーローを思い出して、あの昔ながらのヒーローをもう一度復活させたいなと思ったんです。
それが、愚直なまでに自分の想いを貫き通して傷つきながらいろいろな問題に向かっていく荒木剛太というひとりの教師になっていったわけです。彼が相手にするのは生徒であり、あるときは考え方の違う同じ教師の仲間であるわけですけど、彼らにどうやって自分の想いを伝えていくのか? そこに荒木剛太のヒーロー感を求めていって、いまの時代に懐かしくて新しいヒーロー像を再生させよう。それが僕の目指したところでしたね」
――荒木剛太のいつも空回りしているキャラクターが面白いですよね。
「そうですね。いまどきなかなかない(笑)。熱血教師ものというのは70年代から80年代にかけて、まさに『3年B組 金八先生』の時代がピークだと思うんですけど、そういう学園ドラマに共感できた時代から、この何十年かで“熱血”がダサくて、本当にパロディにしかならない時代になりましたよね。
そんな風潮だからこそ、藤ヶ谷太輔くんに愚直なまでに自分の信念に向かって突き進んでいく教師を敢えて演じてもらって、その熱いものをストレートに伝えたいと思いました。パロディややり過ぎのコメディの要素を混ぜるより、ストレートに伝えていった方が人の心にいまは逆に届くのかな、という気がしたんですよね」