あなたなら、どのiPhoneシリーズを買いますか?

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2024年3月のスマートフォン(スマホ)のシリーズ別販売台数1位は「iPhone 14」、2位は「iPhone 15」だった。23年9月発売の「iPhone 15」が最新機種だが、価格の安さから、1世代前の「iPhone 14」(22年9月発売)のほうが売れている。こうした新旧逆転はiPhoneらしいと思う。

スマホといえばiPhoneだが……

国内初代モデルとなる「iPhone 3G」は2008年7月発売。今から15年以上前だ。Appleのオンラインストアでは、24年4月現在、iPhone 15/iPhone 14シリーズと「iPhone 13」(21年9月発売)と「iPhone SE(第3世代)」(22年3月発売)も購入可能だ。

例年通りなら、今年9月頃にiPhoneの新モデル(iPhone 16?)が登場するとみられる。今はちょうど中間点だ。端末価格が高騰している今、iPhoneユーザーの筆者がいま買うべきiPhoneを考察してみたい。

iPhone選びで悩ましいのは何といっても価格。最新モデルがいいとなると、必然的に「iPhone 15 Pro」か「iPhone 15」シリーズとなる。しかし、スマホ1台の利用期間(ライフサイクル)を4年と考えた場合、最上位モデルの「iPhone 15 Pro Max」1TB(24万9800円)の1年あたりの使用料は6万2450円、1日の使用料は171円となり、1日8時間使っていたら、1時間当たり21円!

こう考えると、20万円を超える「iPhone 15 Pro Max」でもさほど高いとは感じないだろう。1日中ずっと使う人ならなおさらだ。つまり、どのiPhoneを選ぶかを考えるときに、価格をベースに考えるのはナンセンスなのではないか、ということだ。

(かなり暴論だとは思っております。自分が買い替える時の、自分への言い訳が多分に含まれている、ということでお許しください)

ちなみに筆者は20年11月発売の「iPhone12 Pro Max」を利用しているため、ここから先の考察は、基本的に同騎手と比較している。

iPhone 15 Proシリーズの魅力

まず、iPhone15 Pro MAXを買い替えの候補とした。Appleのウェブサイトを見ると、「まずは、ハイライトから。」と題してイチオシのセールスポイントが最初に出てくる。

「A17 Pro」「チタニウム」「iPhone史上最大の高額ズーム」「アクションボタン」

これらがイチオシポイント。とてもわかりやすい。

「A17 Pro」は、ざっくりいうとプロセッサが速くなった、ということ。速いに越したことはないのだが、筆者の日常的な使い方で「iPhone 12 Pro Maxは遅い」と感じたことがないので、ここはそれほど響かない。そもそもPCやiPadでやるから関係ない。一方、RAWデータをガンガン扱う人、動画編集バリバリやる人には重要な進化点だ。

「チタニウム」は、軽くて強度があるのがポイント。いま使っているスマホと比較して欲しい。ちなみに「iPhone 12 Pro Max」と比較すると、「iPhone15 Pro MAX」は5gほど軽い。

「iPhone史上最大の光学ズーム」、これが筆者にとって一番惹かれるところだ。

光学5倍望遠レンズ、35mmフィルムカメラ換算で250mmのレンズがポケットに収まる。これはかなり魅力的。筆者の自宅近くでウォーキングすると、セキレイなどの鳥がいることがある。5倍望遠ズームなら、かなり寄った写真が撮れるかもしれない。製品ページでは超広角マクロによる花の作例も掲載されていた。ウォーキングする道にはいろんな花が咲いているので、この機能も魅力的だ。

さらに、光学ズームとは関係ないのだが、「空間ビデオ」が撮影できるということに、かなり心を揺さぶられる。筆者は「Vision PRO」は持っていないのだが、Meta Quest 3のユーザーである。先日のアップデートでMeta Quest 3は空間ビデオを表示できるようになった。サンプル動画を見る限り、これがなかなかステキな体験なのだ。

この空間ビデオが自分の撮影した映像だったら……と想像するとワクワクするのだ。「アクションボタン」は実際に使ってみないと便利さがわかりにくいが、ショートカットを呼び出せるということなので、実はめちゃくちゃ便利なことができそうな予感はする。

やばい。

調べていたら、かなり欲しくなってしまった。

次期モデルまでガマンする?

「iPhone15 Pro Max」の進化、公式サイトでチェックすると、めちゃくちゃ欲しくなってくる。さすがはApple、見せ方がうまい。

しかし、あと半年待てばおそらくiPhone 16が発売される。この時期はまさにゴルフのパットの時の「入れごろ外しごろ」という感じだ。次のiPhoneがどんなものなのかはとうぜんわからないので、ここは、

「iPhone 15のその魅力的な機能、どうしても必要なのか?」 という視点でガマンできるかどうかを考察してみよう。

「A17 Pro」は、たぶんガマンできる。なんといってもiPhone 12 Pro Maxでまったくスピードに不満を感じていないのだから。強力で高速なプロセッサを手に入れたら、きっとやりたいことが増えるのは間違いないけれども。

「チタニウム」、これもたぶんガマンできる。なんといってもiPhone 12 Pro Maxとの差は5gだ。「iPhone 12 Pro」シリーズのステンレススチールはとても美しい。背面のテクスチャードマットガラスもステキだ。

「iPhone史上最大の光学ズーム」は、魅力的だ。しかし、iPhone 12 Pro Maxのカメラ性能も決して悪くない。超広角から2.5倍望遠まで3つの光学レンズが付いているし、ただシャッターボタンを押すだけで、どんなシーンでも非常に美しい写真が撮れる。日常使いでまったく問題を感じさせない。5倍ズームや超広角マクロがあれば、写真を撮る楽しみは増えるだろうが、日常の撮影では広角レンズの出番が多く、それは「15」でなくとも十分だ。

空間ビデオ撮影は……これはまあどうしようもない。しかし、「Apple Vision Pro」を購入する予定がないなら、当面は不要だ。

「アクションボタン」は、ショートカットを登録すれば、便利さが増しそう。

筆者がよく使うショートカットは「単語登録」(iOSの単語登録は通常の手順ではめんどうなので)、「今日の日付をクリップボードにコピー」(メモアプリに、メモを書いたときの日付を記録しておきたいのだ)、「90歳まであと何日?」(自分の寿命をとりあえず90歳と決めて残りの人生を大切にするために時々見る)など。これらのショートカットを自作して、Widgetでホーム画面に表示させている。アクションボタンがあれば、残りの寿命を意識する機会も増えそうだ。

でも、「アクセスビリティ」の機能の背面タップを使えば、これらのショートカットをツータップ、あるいはスリータップで呼び出せるので、とりあえずはそれで代用可能だ。

今すぐ買い替えたいなら「iPhone 13」でもよくないか?

新しいiPhoneは高性能なので、数年前に発売された旧機種でも十分に現役だ。筆者のiPhone 12 Pro Maxも発売から4年が経過しているが、日常の使用に特に不便は感じていない。しかし、使い始めてから月日が経っているため、バッテリの劣化はいかんともしがたい。モバイルバッテリなどを常時持ち歩いていても、購入後5年ぐらいが限界だろう。バッテリ自体の交換も可能だが、正規代理店だと費用は1万円以上かかる。

使い古したiPhoneに1万円以上かけるなら、いっそのこと買い替えようか、と悩むのが4年目、5年目のiPhoneユーザーだ。具体的には、「iOS 17」サポート対象外の「iPhone 8」や「iPhone X」などの古い機種のユーザーにとって、今買い替えるのなら、どのiPhoneがいいだろう?

iPhone 15シリーズの「USB-C」「ダイナミックアイランド」「常時表示ディスプレイ」は、ソフトウェア的な工夫では代替できないものだ。

「USB-C」は大きな変更点だが、過渡期の今はどちらでもいい。「ダイナミックアイランド」は、通知大好きな筆者としては魅力的だ。小さな表示がグイッと広がるアニメーションはみんなワクワクするだろう。でも、絶対にないと困る、というほどではない。

「常時表示ディスプレイ」は、iPhone 14に搭載された時は「なくても良いかなあ」と思っていたが、iOS 17でスタンバイモードが登場してから、かなり欲しくなっている。充電中にスタンバイモードフォトフレームになったり、カレンダーや時計が表示できるのは、いつも先のことが気になる筆者としては魅力的なのだ。

とはいえ、搭載していない機種でも、画面をタップすれば呼び出せるので、なくてはならない、ということはない。そう考えると、iPhone 8などハイエンドではないシリーズを使っているユーザー(ライトユーザー)が、これからも同様に使い続けるならば、今買える最も安価な機種、「iPhone 13」が意外に狙い目かもしれない。

「8」と「13」を比較すると、画面は6.1インチに大きくなっているし、カメラは超広角が使えるし、MagSafeはiPhoneスタンドを使うときにすごく便利だし、バッテリだって約1.5倍も持つのだ。

さあ、あなたなら、どのiPhoneシリーズを買いますか?

もし、筆者が今すぐ買い替えるなら、機種は「iPhone 15 Pro Max」となる。容量は512GB。Appleのオンラインストアで一括払いで購入すると値段は21万9800円だ。購入後、現在利用中のiPhone 12 Pro Maxは下取りに出す。Appleの査定によれば、下取り価格は最大6万3000円なので、実質負担額は15万6800円となる。

下取りに出せば約15万円! ちょっとだけ食指が動く。

では、iPhone 8ユーザーが「iPhone 13」に買い替える場合はどうだろう? ちなみに「BCNランキング」の24年3月のシリーズ別販売台数ランキングによると、iPhone 13は27位につけている。

iPhone 8(SIMフリー)の256GBモデルの中古買取価格をいくつかのサイトで調べてみた。相場は、だいたい1万円から1万2000円のようだ。iPhone Xなら1万8000円~2万2000円と、さらに高く買い取ってもらえる。iPhone 13(SIMフリー)256GBの価格は11万8000円。同様に、iPhone 8を1万2000円で買い取ってもらえれば、実質負担額は10万6000円となる。

購入したiPhone 13を、また5年間使うと考えれば、年間2万2100円。一日当たりたったの58円!

というわけで、iPhone 8ユーザーにとっては、販売中の機種で最も安いiPhone 13こそおすすめといえるだろう。

しかし、本記事で紹介した機能の中で、これはぜったい今欲しい、という機能がないのであれば、今使用中のPhoneをあと半年、使い続けるのがベターだろう。半年後に、新しいiPhoneが登場するのは間違いないだろうから、その時までガマンできるならば待つのだ。

でも、もうバッテリのへたりがガマンできない! という状態の人は、今使っているiPhoneを下取りに出す前提で購入しよう。iPhoneは買い取り価格が下がりにくいので、使わない手はない。(3Dデザイナーズスクール https://3dschool.jp/ 学長・西脇 功)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

西脇 功

3Dデザイナーズスクール(https://3dschool.jp/)学長。製薬会社勤務を経て、1987年にApple社のMacintoshに出会いコンピュータ業界へと転進。IT系企業数社でコンテンツマーケティング、広報・宣伝のプロとして活動。製品導入事例の執筆、オウンドメディアのWebサイト立ち上げからコンテンツ作成までを一人で担当。2020年独立し、合同会社天使の時間を設立。3DCGソフト活用のためのオンラインスクール運営や、Webメディアへの記事執筆を行っている。