水深150mまで耐える「HUAWEI WATCH Ultimate 2」

最近、ファーウェイのスマートウォッチが元気だ。つい先日発売した「HUAWEI WATCH Ultimate 2」には驚いた。特にダイビングでの性能を重視したモデルで、水深150mまで耐える設計だという。レジャーダイビングの深度は深くても40m程度。普通の人が使うには十分な余裕をもって安心して利用できる。しかも、水中でのダイバー同士の連絡用に「Dolphin通信」と呼ばれる、ソナーを使った通信機能も備える。ダイビングは安全のため必ず複数人で潜るのが鉄則。その際のコミュニケーションで活躍する。水中では通常、酸素ボンベを叩いて音を出したり、手でサインを送ったり、水中スレートと呼ばれる板に文字や絵を書いたりするのが主流だ。Dolphin通信は、30mまでの距離であれば、スマートウォッチでメッセージのやり取りができるという。いざという時のSOSを伝える機能もある。水中では電波はほとんど飛ばないが、音波を使ったソナー通信だからこそできる芸当だ。これを製品単体で実現するというからすごいものだ。

まだある。10月に発売された「HUAWEI WATCH GT 6 Pro」の自転車に関する機能だ。そもそも自転車とスマートウォッチは相性がいい。走行距離や速度、傾斜、獲得標高の把握に加え、GPSを使ったナビゲーションも利用できる。さらに心拍数の計測もできるため、運動強度を適切に保ちつつ、サイクリングを楽しむことができる。ところがさらに、推計値ではあるが、出力「パワー」も、ウォッチ単体で計測することができるようになったという。ここが驚きのポイントだ。このパワーを把握することで、自分がどの程度の強度でどの程度の時間、ペダルを踏み続けられるかを把握できるようになる。今や、ツールドフランスなどの自転車のプロ競技では、パワーを把握しつつ、適切なペース配分をしながら戦うのは常識。もちろん専用のセンサーを使って計測するわけだが、それが、スマートウォッチ単体である程度できてしまうというのだ。専用センサーを接続すれば、正確な心拍数やパワーを始め、スピードやケイデンス(ペダルの回転数)の計測にも対応するという。まさに「サイクルコンピューター」そのものの機能を有するわけだ。

巨額な開発投資で知られるファーウェイの研究開発がスマートウォッチに注がれた結果、続々とユニークな機能を備えた製品が登場している。上記のほか、同社はゴルフでの活用にも注力している。前述したGT 6 Proは、80カ国以上で1万7000以上のコースマップに対応。高精度な距離の測定が可能だ。そのほか、血圧計付きスマートウォッチ「HUAWEI WATCH D2」もユニークだ。管理医療機器 自動電子血圧計認証も取得、医療機器としても認められるほど。果たしてこれらを「ウォッチ」で片づけてしまっていいものだろうか。

ファーウェイの製品を例にとって一部の機能を紹介したが、ほかにも様々なスポーツでのサポート機能や、スマートフォン(スマホ)との連携など、生活をサポートする多岐にわたる機能を備えるのが、昨今のスマートウォッチだ。もう「ウォッチ」の名称はふさわしくなくなっているのではないだろうか。逆に、単なる「腕時計」として考えると、スマートウォッチには、まだまだ不満な点が多い。まず充電の問題がある。前述のGT 6 Proは、最長で21日間も使えるという驚きの電池の持ちを誇る。さりとて、普通の腕時計で電池を気にする必要はほとんどない。ウォッチフェイスのデザインも山のように選択肢がある。しかし、ハードウェアとしての解像度はまだまだ足りない。どうしても「画面表示感」はぬぐえない。そのうえ通常は表示は消えている。腕にくっついた黒い板に過ぎず、アクセサリーとしても何とも恰好が悪い。

しかし、今のスマートウォッチを「腕時計」として考えず、「身に着ける超小型コンピューター」として捉えれば、充電の頻度も画面表示の物足りなさも全く気にならない。しかも、AIを駆使してスマホと連携させれば、日常的な生活に不可欠な相棒に昇華するのではないだろうか。1800年代初頭から連綿と続く腕時計の歴史を一旦断ち切り、デザインから何から全く別のアプローチを考える潮時なのかもしれない。さて、その超小型コンピューター。どこにつけようか。(BCN・道越一郎)