JR東日本は2026年3月14日に会社発足以来初となる運賃改定を実施する(画像はイメージ)

JR東日本は10月8日に「運賃改定の詳細について」と題したプレスリリースを発表し、運賃改定の概要をまとめた「運賃改定詳細パンフレット」と運賃改定日の2026年3月14日以降の運賃を確認できる「改定後運賃検索サイト」を公開した。 経路検索サービス「駅すぱあと」を運営するヴァル研究所も、10月10日には運賃改定日以降の日付を入力することで値上げ後のJR東日本の運賃・定期代が分かるようにした。今回は値上げ幅が大きいため、例年よりもかなり早いタイミングでの情報アップデートだ。

JR東日本の来春の運賃改定、ポイントは四つ

来春の運賃値上げはかなり複雑だ。要点をざっくりと説明すると、「定期外(普通旅客運賃)は平均7.8%値上げ」「通勤定期は平均12.0%・通学定期は平均4.9%値上げ」「首都圏の『電車特定区間・山手線内』の運賃区分を『幹線』に統合するので(除外区間あり)、同区間で完結する乗車は大幅値上げ」「JR他社とまたがって利用する場合に通算加算方式を導入。別線化に伴い、東京~熱海間は運賃改定後、JR東日本ルートと新幹線に乗車するJR東海ルートで運賃が変わる」の四点を押さえた上で、よく利用する区間の現行運賃と値上げ後の運賃を確認し、値上げ幅が大きいなら、負担増を避けるため何らかの対策を考えるべきだろう。

この運賃改定により、初乗り運賃(営業キロ1~3km)はIC155円、きっぷは160円となる。

西武鉄道も運賃改定へ 子育て世帯向けの優遇策も

JR東日本に加え、西武鉄道も運賃改定を実施すると発表済み。改定率は定期外11.9%、通勤定期10.0%、全体10.7%。初乗り運賃(営業キロ1~4km)はIC169円、きっぷは170円。

運賃改定と同時に、西武鉄道は26年3月から、子育て世帯の負担緩和策として、小田急電鉄が22年3月に始めた仕組みと同じ「小児(6歳~12歳までの小学生)IC運賃1乗車50円」と「小児向け通学・通勤定期券の均一料金化(1カ月一律500円または1000円)」の二つの新たな取り組みを開始する。また、通学定期券は値上げせずに据え置きとし、小学生だけではなく、中学生以上の子ども・学生のいる世帯も優遇する。

プライベートの鉄道利用を直撃する運賃値上げ 「職住近接」が進む?

鉄道やバスの運賃値上げは、通勤手当として定期券相当額を定期的に支給されている場合、自己負担はないため、マイナスもプラスもない。むしろ、西武鉄道のように値上げと小児運賃値下げを組み合わせた施策を実施するケースでは、小児運賃の値下げ分だけ得する計算だ。

いったん自己負担で交通費(鉄道・バスなど)を支払い、後日、会社宛てに申請すると振り込まれる「交通費実費精算制」を採用する企業に勤務している場合も、一時的な前払い分が増えるだけで自己負担は変わらない。対して、交通費支給のない企業に勤める人やプライベートで頻繁に電車に乗る人は、今回の運賃値上げは負担増となる。

運賃改定後の節約術としては、「値上げした鉄道会社を避けた別ルートに切り替える」「駅間の距離が短い都心部では、1~2駅程度なら徒歩やシェアサイクルを活用する」「遠方にあるお気に入りの店舗に自宅近くへの出店を要望する」などが考えられるだろう。

例えば、現行IC運賃208円の東京~池袋駅間の運賃は、26年3月14日以降、253円にアップする。値上げ額は45円だ。一方、東京メトロ丸ノ内線の東京~池袋駅のIC運賃は209円なので、運賃改定後はメトロ利用ルートに切り替えると安く済む。

この運賃改定によって、職場の近くに住む「職住近接」が進み、東京都心への人口一極集中がさらに進むという見方も広がっている。フリーランス・個人事業主は確かに都心に住むメリットが高まりそうだ。しかし、運賃以上に家賃水準も上がっているので、経済的に都心居住が正解とは言い切れないだろう。

今から考えたい運賃値上げ対策 ポイント還元で実質負担軽減を

JR東日本は、ウェブ登録したSuicaを使い、Suicaエリア内の在来線に乗車すると、1ポイント1円相当として使える「JRE POINT」が最大2%たまる「在来線乗車ポイント」サービスを展開しているので、まだ登録していない人は今のうちに、iPhoneまたは「おサイフケータイ」対応のAndroidスマートフォンを用意して「モバイルSuica」を設定しておこう。運賃が上がると、もらえるポイント数は増える。つまり、JR東日本の運賃改定後、乗車ポイントサービスに登録するメリットが高まるといえる。

運賃値上げによる負担増を避けるには、目的地に向かうルートや移動手段の見直しとポイント活用が鍵。乗車ルートの変更は「慣れ」や「所要時間増」といった点から実行が難しい可能性が高いが、「ポイ活」なら誰でも気軽に始められるので、JR東日本に限らず、事前にウェブ登録しておくだけで、乗車に応じてポイントがたまる乗車ポイントサービスは登録しておいて損はない。