「スマホ中毒」に警鐘を鳴らす独自の条例を制定(画像はイメージ)

【家電コンサルのお得な話・270】10月1日、愛知県豊明市で「スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例」が施行された。いわゆる「スマホ使用(2時間)条例」と呼ばれ、余暇時間におけるスマホなどの利用を「1日2時間以内」とするよう促すものである。

「デジタル依存」と「健康」への影響を鑑みて導入へ

今年10月1日施行された「スマホ使用(2時間)条例」は、条例を破っても罰則はなく、あくまで啓発を目的とした「目安」だが、全国初の取り組みとして大きな注目を集めている。

背景には、長時間使用による睡眠不足や生活リズムの乱れがある。同条例の最大の目的は市民の適切な睡眠時間の確保。特に子どもの場合、心身の成長に十分な睡眠時間は欠かせない。この条例により、市は家庭での話し合いを促し、市民の健康と家庭内のコミュニケーション回復を目指している。

ちなみに私も、寝床につくとついついYouTubeを見てしまう。その結果、睡眠の質の悪さも実感するようになり、体のだるさが気になっていた。一念発起して寝室にスマホを持ち込まないようにすると、不安はあるが、割り切ることができた。私の実感としてスマホを触らないほうが眠りが深くなり、睡眠時間も少し長くなっている。

しかし「今日ぐらいいいか」という油断が出ると、再び寝床でのスマホ操作が日常化してしまう。まるで禁酒や禁煙と同じで、一度断っても、また手を伸ばしてしまう依存の構造がある。条例という形には賛否はつきものだが、こうした「悪癖」を自覚するきっかけとしては意味があると思う。

国も「スマホ依存」の影響を無視していない。文部科学省の調査では、スマホの長時間使用と学力低下との関連が指摘されている。また、厚生労働省も「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、年齢別の推奨睡眠時間として、小学生9~12時間、中・高生8~10時間、成人も6~8時間の確保を推奨している。

デジタル機器は便利であり、もはや生活に欠かせないものとなっている。それでも、使い方を誤れば心身のバランスを崩すリスクを伴う。豊明市の条例は強制ではなく、私たちに「自分の使い方を見直す」ことを促している。結局のところ、スマホ依存の問題は技術ではなく、時間の使い方の問題であり、時間は命そのものの使い方である。行政の取り組みがその気づきの契機となるなら、条例の意義は十分にあると言える。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所 堀田泰希を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実践的内容から評価が高い。