筆者が行政書士、ファイナンシャルプランナーを開業した20年前に「婚活」という言葉は存在しませんでした。広く知られるようになったのは流行語大賞にノミネートされた2008年です。当時はまだ「婚活をしている」と知られたくないという意識が強かったです。
しかし、16年が経過した今「婚活で結婚しました!」と堂々と言えるようになったので、ついに婚活は市民権を得た印象です。
筆者は仕事で夫婦の悩み相談にのっていますが、最近、婚活で結婚した夫婦が離婚の相談をしに来るケースが増加中です。そこで今回は。結婚わずか4年で夫婦の危機に直面した高井美織さん(39歳/仮名)の実例を紹介します。
大手広告代理店で働く彼はまさに理想的な相手で…
美織さんが夫(32歳)と知り合ったのは婚活アプリ。彼に好意を持ったのは勤務先が大手の広告代理店だったから。美織さんは中小企業勤務の普通のOLでした。
彼は、美織さんが「いまより広い家に引っ越したい」と言えば一緒に物件を探しに行ってくれたり、「海外で挙式をしたい」と言えばブライダル業者で見積もりをとってくれたりと理想的な相手でした。
とんとん拍子に結婚話が進み、籍を入れ式を挙げたそうですが、事態が暗転したのは一緒に暮らし始めてから。夫が美織さんの家に転がり込む形でした。夫が日中に連絡がつかなかったり、帰宅が明け方になったりなど、様子がおかしいのです。
なんと夫の職業は会社員ではなくフリーターだったのです。美織さんはまんまと騙されたのですが、それなのに彼のことを許したのです。なぜでしょうか?
理由は、夫が「自分の店を出すのが夢だった」と熱心に語ったから。そして「いま流行っているキッチンカーをやろう。一緒に頑張ろう!」と誘ってきたのです。美織さんは夫の自信家なところに惚れていたので迷ったものの、彼を助けることに。しかし、キッチンカーを始めるには営業車、道具の一式、家電製品として400万円が必要でした。
夫は夢のためにアルバイトをしているわりには貯金がゼロ。フリーターなので融資やリースの審査は通りません。そこで美織さんが全額、援助することにしたのです。美織さんは「夫の将来性に先行投資する」ことにしたのです。
「今度こそ大儲けできる」と大金を用意して…
そんな中、新型コロナウイルスが猛威を振るいます。会社員は在宅で仕事をすることが増え、オフィス街にキッチンカーを置いても十分な売上はあがらず、赤字の月が増えていったのです。
開業わずか2年で最初の資金が底を尽き、食材を仕入れることができず、キッチンカーを手放すしかなかったのです。キッチンカーの売却金は80万円。差し引き320万円を失ったのです。
美織さんが「今度こそ、ちゃんとした仕事をして欲しい。就職先を見つけて」と夫に頼んでも聞く耳を持ちません。そんな夫が次に見つけてきたのは真珠の販売。コロナ禍で人々は財布の紐を締めているため、宝石などの嗜好品の需要が激減。真珠の仕入れ価格が下がり安く仕入れることができるので、コロナが落ち着いた後に高く売ることができれば、今度こそ大儲けすることができると言うのです。
美織さんは半信半疑ながら「これで最後だから」となけなしの450万円を夫に託したのです。