なぜ“ブラック化”するのか?
ブラックイクメンも、最初は普通のイクメンだったのかもしれません。ある日、本当に育児のやむを得ない事情で早退などした際に、「子供を理由にすれば、仕事はサボれる」という発想に行き着いてしまったのではないでしょうか。
人の心は、決して強くありません。楽な道が見えてしまえば、恐らく多くの人々がそちらに流されてしまうでしょう。しかしブラックイクメンについては、周囲に対して迷惑を掛けてしまいます。これは、やはり避けなければなりません。
イクメンがブラック化してしまう理由の根底にあるのは、やはり会社や仕事への不満ではないでしょうか。楽しいこと、あるいはやり甲斐の大きいことならば、むしろ積極的に取り組むはずです。
そしてもうひとつは、会社が育児に対して優しい環境ではないということにあります。これまで同様に仕事をこなしながら育児にもパワーを使い続けることは、並大抵のことではありません。しかし残念ながら、ほとんどの会社において、そうしたイクメンを支える体制は不十分と言わざるをえないでしょう。
一部企業でやっと男性の育児休暇に寛容さが見られ始めているものの、育児休暇など一時です。育児はずっと長く続くものであり、仕事との両立を基本とした体制作りが必要ではないでしょうか。想像以上にのしかかる疲れやストレス。そこに甘い“キッカケ”が与えられれば、ブラック化するのは簡単です。
しかし女性が育児を担ってきた時代においても、同じく “ブラックママ”的な存在は間違いなくあったはずです。では、なぜ今になってブラックイクメンがフォーカスされるのか。それはやはり、育児における男女差があるからでしょう。企業は育児について、もっと根底から考え直す必要がありそうです。
ブラックイクメンを減らすには?
では、企業としてどう対策すれば良いのか。まず認識しておきたいのは、会社が“人の集合体”であるという点です。多くの異なる個人が働く以上、“誰にとっても働きやすい会社”など目指すのは困難の極みといえるでしょう。
ブラック化の理由が仕事への不満にあるのなら、まず社員1人1人と向き合うこと。会社が社員に寄り添い、解決へと導きます。ただしそれでも、100%不満が消えることは難しいでしょう。特定の個人にとって働きやすい環境に偏れば、残念ながら他の人から不満が起きます。それが、“人の集合体”であるということです。何に不満を持ち、何に喜びを得るのかは、人によって違うのです。
そこで考えたいのが、『働き方に選択肢を与えてあげる』ということ。働き方が1つでは、いくら改善しても必ずどこかに不満が生まれてしまいます。それならば、出来る限り自分に合った働き方を選べるよう、選択肢を与えてあげるのです。
遅刻で遅延証明書を提出させるように、育児にも証拠を求めることも出来るでしょう。子供を病院に連れて行くのであれば、病院に着いたときに写真を送らせたり、医師から証明書にサインをもらったりという形です。
しかし、それでは育児そのものを窮屈にしてしまい、むしろ社員のストレスを助長しかねません。そうではなく、イクメンにとって働きやすい環境を選ばせることで、「ここで働きたい」と思ってもらうこと。育児と仕事とは互いを阻害し合うのではなく、むしろ双方を充実させるためにプラスの関係であるものだと思うのです。